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 言葉は思想を持ちます。ITからICTへ言葉が変わったのは、ハード優先からソフトの充実へと、情報化のステージが進んだことを反映しています。これは以前ご説明したとおりです。今回は別の例を紹介しましょう。

 行政について語られる際、最近はガバメントに代わって、ガバナンスという言葉が使われることが多くなりました。ガバメントは「集権的」「一方通行」といったニュアンスを持つのに対し、ガバナンスといわれる時には、「分権的」「双方向」「コラボレーション」といった意味が込められていると思います。

 ガバナンスという言葉には、今の時代に求められている公共体のあり方が反映されています。双方がステークホルダーであり、互いにWin-Winの関係を築き、合意を形成しながらものごとを行う。そこではITも大きな役割を果たしています。

 北海道では、道内の8割以上にあたる153の自治体が参加する「北海道電子自治体共同運営協議会」で、異なる複数の自治体が、共通の基盤システムを利用する計画を推進しています。電子申請から始まり、いずれは税や住基などの基幹系システムともデータ連係が行われるとのことです。ガバナンスの思想が、コラボレーションという具体的な形をとって表れているわけです。それを可能にしたのは、間違いなくITの力でしょう。

 コスト削減やスピード、利便性といったものがITの性質だと思われてきましたが、ICTの時代を迎えた現在、社会の有り様や仕組み、つまりソフトの部分までが、ITによって変わりはじめています。

 ITはバリアフリーの性質を持っています。時間と空間の壁をなくし、自治体の壁もなくす。公共体の紙文化・暗黙知の中でできあがった県の壁や市の壁、部や課の壁、さらには公、共、私の壁など、自治体のあらゆる壁がなくなり、境界が曖昧になりつつあります。

ハードとしてのITが整った今、変革は必然

 三重県知事に当選した1995年、全国の都道府県知事が参画する「全国知事会」という連絡会に初めて出席したのですが、そこで持った強い違和感を今でも覚えています。会議が、ことごとく全会一致で決まっていくのです。市長が参加する「全国市長会」という連絡会もあるのですが、こちらも状況は同じだと聞きました。地方分権・地方自立の時代なのに、どちらの連絡会も、半ば総務省の下請けのような形になっていたのです。

 1993年に、すでに衆参両院で地方分権推進の決議が採択されていましたから、こうした一律主義や全会一致主義はあるべき姿ではないと思いました。それで、知事の仲間を募って、関心を同じくする者同士が任意に交流を持てるよう、デジタルコミュニティを作りました。特定の課題に対し、隣近所や県内といったくくりではなく、全国から任意に仲間を求め、時間や空間の制約を超えていろいろな情報を共有するわけです。これもまた、コラボレーションです。

 こうしたコミュニティをいくつか作った結果、横並び一線を廃し、やれるところからどんどん変えていこうという機運が生まれました。全国知事会の体質は変わり、「戦う知事会」としてマスコミで取り上げられるまでになったのです。

 これはもちろん、知事の皆さんが努力した成果だとも考えられます。しかし同時に、裏でITがそうさせていたのだということもできるしょう。ITという全く新しい次元のツールが出てきて、不変のものと思われていた紙文化・暗黙知の世界に突如として変革が訪れる。すでにハードとしてのITは十分に浸透しているので、あとはその上に立って、いつ、誰が、どのようにソフトを変えていくか、という段階です。変革は必然的な流れといえるでしょう。

 そう考えると、北海道のシステム共通化とも同じ文脈にあることがわかります。いずれもITによって、自治体のビジネスプロセスがリエンジニアリングされたわけです。

 リエンジニアリングは今後、ほかにもいろいろな形で実現されると思いますが、北海道のように基盤システムを共通化する動きも、どんどん広まっていくはずです。なぜなら、ITがそうさせるからです。