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 地方分権の時代には、自治体だけでなく、主権者も変わらなければなりません。自治体が国から自立するように、主権者も自治体から自立することが求められます。

 医療は現在、インフォームド・コンセントによって質を向上させようとしています。医師は病状を正しく理解できるよう十分な情報を提供した上で、治療法の選択肢を示し、最終的な判断を患者にゆだねます。患者の健康を左右する重要な決断が医者任せになってしまっていたところを、患者自身の手へ取り戻すわけです。

 前回取り上げたマニフェストも、選挙の質を高めるための主権者に対するインフォームド・コンセントといえます。

 主権者の生活も、本来であれば主権者自身が決めるべきです。そのためには、「皆で徒党を組んで市役所へ陳情に行こう」といった他者依存の考え方からは脱却する必要があります。自治体から自立しなくてはいけないのです。

 民主主義の本質は、簡単にいえば「あなたのできることはあなた自身でどうぞ」ということです。あなたができないことは家族で。家族でできなければ地域で。地域でもできなければ、その時は自治体が必ず守ります。将来的には、そのくらいまで自治体の役割は小さくなるはずです。

 こうした小さな政府・小さな自治体の時代には、主権者一人一人が「ワンフォーオール・オールフォーワン」の意識を持つことが重要になります。自分は公の中にいて、足りないところ、弱いところを住民同士で補完しあいながら生活している。全員がこうした公共意識を持てば、社会秩序からはずれる人も少なくなるでしょうから、権力による監視も少なくてすみます。

 そのためにはまず、国民のレベルを上げることが重要になります。他者依存では「国が悪い」「自治体が悪い」と行政に注文をつければよかったのですが、自立すれば自己責任に変わります。

 医療のインフォームド・コンセント、選挙のマニフェスト、どれも基本は同じです。示されている選択肢に対し、自分自身が考えて決断をしなくてはならないのです。そこには決断に対する責任が伴います。

 では、こういったことを可能にするにはどうしたらいいのでしょうか。

 やはり、私は教育にこそカギがあると思います。ワンフォーオール・オールフォーワンの意識というものは子供のうちから育てる必要があるでしょう。英数国社理で80点以上とるのが一番偉いのだという教育観は変わらざるを得なくなる。

 ICT時代には、実に様々な情報が降りかかってきます。溢れる情報とどうつきあっていくのか、自分の意志をどうやって決めていくのか、そういうことを指導できる教育環境が整っているでしょうか。

 現在、日本の教育を巡る議論は、愛国心の扱いをどうするとかそういった部分に向きがちですが、今こそICTによって変わる世界、文明史的転換点を生きる子どもたちに求められる能力とはどういうものなのかを真摯に考えるべきでしょう。