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 まさか、ここまで来るとは--。このところ続々登場している「Webデスクトップ」には、本当に驚かされました(関連記事)。

 詳細は日経パソコンの2006年8月14号に掲載していますが、OSのデスクトップと見まごうばかりの環境を、ブラウザー上で実現するサービスが相次いでいるのです。コマンドラインでシェルを操作したり、ブラウザー上で別のブラウザーを開いたりすることもできます。実際に触っていると、この先どこまで進化するか末恐ろしくなるほどです。

 Webデスクトップは、JavaScriptで書かれたプログラムをブラウザー上で実行する、いわゆる「Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)」という手法で作られています。Ajaxは、米グーグルの「Google Maps」などがきっかけとなり、急速に世界中に広まりました。最初は小規模なものが多かったのですが、そのうち「Writely」などのように、デスクトップアプリケーションをブラウザー上で実現するものが登場し始めました。そしてついに、デスクトップ環境そのものがブラウザー上で動くところまで来ました。

 Ajaxが話題になり始めた頃、ここまで普及するとは正直思っていませんでした。Ajaxを構成する個々の技術はずっと以前から存在しているものでしたし、実現できることはFlashと似ていたので、それほど目新しさを感じなかったのです。しかしその予想は、大きく裏切られることになりました。

 Ajaxは、どうしてこれほどまでに人気を集めたのか。人気の秘密をさまざまな専門家に聞いてみると、技術自体のすばらしさに加え、「名前」を挙げる人が少なからずいます。

 Ajaxという名前が誕生したのは、2005年2月のこと。確かに個々の技術は既存のものでしたが、使い方によって大きな威力を発揮することに着目し、米国のあるソフトウエア関連のコンサルタントが自らのブログ上で「Ajax」と呼んだのです。これがソフトウェア技術者の間で話題になり、ほんの1カ月ほどの間に世界中に広く知られる存在になりました。覚えやすく、なじみやすい名前を付けることが、物事の普及においていかに重要であるかがよく分かる事例です。

 名前という意味では、最近ではやや食傷気味の感も出てきた「Web 2.0」も、名前がブームを牽引した例の一つでしょう。個人的には、「Web 2.0」のうまいところは、「従来との連続性」を持たせながら「新しさ」を感じさせたところではないかと思っています。「Web」という既知の用語でだいたいどんなものかをイメージさせつつ、「2.0」で「今までと何かが違う」という期待感をうまくあおります。実ににくい。

 一方で、一連の「2.0」ブームは、言葉だけを先行させることの安易さも教えてくれました。ここ数ヶ月でも「仕事 2.0」「就職 2.0」「子育て 2.0」などなど数々の「2.0」用語を目にしましたが、その後広く使われている様子はありません。結局は「2.0」と名乗るだけの中身が伴っていなければ、名前だけ立派でも定着しないのですね。記者という職業柄、新語には誰よりも先に飛びついてしまいがちなのですが、何よりも先に中身をきちんと評価することの重要さを、改めて思い知らされている今日この頃です。