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普通に使っていて、パソコンが発火する。6月21日、最初に写真付きで報じたのは英国のITニュースサイト「The Inquirer」。いやあ、この写真は衝撃的だった。こんな燃え方をするなんて、いつも電源アダプターに接続して自宅に置いてある私のパソコンは大丈夫なのか?

The Inquirerが報じたパソコン発火の様子を伝える記事

デルはリコール、アップルは確認中

その後の調べで、原因はソニー製リチウムイオン電池の製造上の不具合にあることが判明、デルはソニーの製造工程上、不具合の生じる可能性があるロットを特定して該当の電池を自主回収する方針を固めた。8月14日のことである。アップル製のノートパソコンには問題含みのソニー製バッテリーが搭載されている可能性があるにも関わらず、アップルからはなかなか方針が出てこなかった。

アップル製品にソニー製バッテリーが用いられている機種があるのは明らかだったが、アップルからは「現在確認中」とのメッセージしか流れてこなかった。私はちょうどその頃、アップルのWWDC 2006に参加して次期Mac OS XのLeopardについて徹底的に勉強したあと、夏休みと称してヨセミテを旅行中だった。

う~~~ん、自宅に置いてある12インチのPowerBook G4は電源アダプターのコードを刺したままデスクに放り出してある。あ~~、こんなことならアダプターを抜いてくればよかった、と馬車が胴体をくぐり抜けられるほどの巨大なヨセミテ・マリポサグローブのジャイアントセコイヤを眺めながら、心ここにあらずの時間を過ごしたのだった。

8月16日、久しぶりに帰着したわが家で、スリープ中のPowerBook G4君は充電完了を示す緑のランプを発光させながらひんやりと鎮座していた。あ~~良かった。これが発火でもしていたら資料の山に引火して全焼の危険さえあったのかも知れない。

ひとまず安心したのもつかの間、8月24日、アップルは約180万個に上るバッテリーのリコール(回収・無償交換)を発表した。うちにはそれに該当するかも知れないPowerBook G4 12インチとiBook G4がある。早速アップルのホームページを訪れ確認してみた。アップルのホームページには現在、Mac本体のシリアル番号、そしてバッテリーのシリアル番号を入力することで発火の恐れのあるバッテリーなのかどうかを確認できる。

不安は的中、早速交換手続

それぞれのマシンからバッテリーを取り外し、アップルのWebサイトでシリアル番号を確認してみたら、ピンポ~~ン、米国旅行中、私を悩ませ続けたあのPowerBook G4君の抱えるバッテリーがまさにその該当製品だった。もう一台のiBookは全く該当せず。こっちは一安心だった。

思い返すだに恐ろしい。PowerBook G4そのものは問題になった製造時期に購入したものではない。しかし、何年も使い込むうちにバッテリーがだんだんへたってきて、今年に入って交換用バッテリーを新しく購入し直したものだった。バッテリー自体は比較的新しいので、冒頭の写真のように発火する危険領域には入っていなかったようだ。現に充電中も特別に熱くなるようなことはなかった。しかし、そのまま使い続けるといつかは恐ろしいことが起こる因子を抱えている。

交換手続は簡単明瞭だった。該当するシリアル番号を入力すると、リコール対象の製品であることが示され、引き取り便の申し込みをする画面が現れる。作業は分かりやすい流れで、スムーズだった。PowerBook G4君はかなりへたってしまっているもともと付属していた古いバッテリーに入れ替え、新しいバッテリーが届くまでしばらく使うことにした。

一般ユーザーへの周知は徹底しているか

事前に危険は回避される見通しとなり、ここまではよしとしよう。しかし、この件に対するアップルの対応はこれで良かったのかと不安を覚える。私のように、海外旅行中でもインターネットにアクセスしながら情報収集に余念がない人ならこんな事態に適切に対処できる。しかし、たまにしかネットにアクセスしない一般ユーザーにこれで情報が確実に届くのだろうか? 新聞も取っていない家庭も多い。そんな人に危険が迫っている(かもしれない)ことがきちんと伝わったのだろうか?

今日(8月28日付)の日経新聞にはでかでかとMacBookの広告が2ページ見開きで堂々と掲載されたが、そこにリコールのお知らせは一言もない。アップルユーザーにこれほどリーチしやすい仕掛けを用意していながら、売ることだけを前面に出したこの広告に反発を覚えた人も多いだろう。

この問題に関係ない人にまで無用な不安を与える必要はない。販売された特定のノートパソコンのそのまた一部に使われているバッテリーの問題なのだから、大きくお知らせ広告を出す必要はない。しかし、該当製品所有者には確実に情報を届ける方策を一生懸命考えなくては企業のイメージダウンは避けられない。

ユーザー登録をした時点から私の手元にはアップルからメールニュースが配信されている。この定期メールにはまだ、今回のリコール情報に言及したものはない。次回の配信は26日だというから、そこに掲載されるのかもしれないが、この種の情報を定期便が配信時期まで待つという判断が理解できない。定期メールは受けるか受けないかユーザー登録時に指定するようになっている。したがって登録ユーザー全員がこのメールを受けているわけではない。そかし、今回のリコールは場合によっては人の生死にかかわる問題をはらんでいる。メールの受信許諾をしていない人にも、特例として伝えるべき性格のものだ。

ホームページでの扱いも大いに疑問だ。画面の下に小さく、「バッテリー交換プログラム」へのリンクがあるが、それに気が付かない人も多かろう。

松下電器産業は石油暖房器具で一酸化炭素中毒を引き起こす可能性がある製品の捜索に全力で取組み、ホームページトップで懸命な捜索を続けている。

松下電器産業は同社ホームページのトップで、不完全燃焼の恐れのある石油暖房器具の捜索を行っている。ここまでしても完全回収にはまだまだ遠い

このような取り組みをしたからといって、死亡事故に至る製品を売ってしまった企業が許されるわけではない。しかし、失策を取り戻す懸命な努力が企業への信頼を引き止める。

松下は物置などに保管したままの製品でも残らず回収しようと懸命に取組んでいる。さもなけば、何年かたち、人々が忘れてしまったころ物置から引っ張り出された暖房器具で事故が起こるかも知れない。

「昔はAppleって果物みたいな名前の会社があってね、PowerBookってオシャレで素晴らしいパソコン作ってたんだ。これはね、おじいちゃんが子供のころパパから譲り受けて使っていたものなんだ。久しぶりに埃を払って電源入れてみようか」。--爆発音--

こんな事態にだけはならないように、今できることに懸命に取組んで。アップルさん。