毎日のように、さまざまなメディアから大量のニュースがあふれ出すインターネットの世界。8月28日には、また一つ新しいニュースサイトが生まれた。
韓国で成功を収め、このたび日本に上陸を果たした「オーマイニュース(日本版)」だ(右図)。編集長は、テレビなどのメディアで活躍してきた鳥越俊太郎氏。開始時の記者数は約1000人だ。突然現れた巨大メディアに思えるかもしれないが、実はこのサイト、記事を執筆するのは普通の市民。記者をなりわいにしている人たちではない。市民が執筆した記事によって構成される、いわゆる「個人参加型メディア(市民メディア)」なのだ。
掲載された記事には、少ないながら報酬が出る。掲載場所によって、2000円、1000円、300円の原稿料が支払われる。記事は原則、署名記事。記事を書くには氏名や住所、連絡先などの情報に加え、銀行口座の登録が条件となる。記事にはコメントを付けることも可能。その場合も銀行口座の登録こそ不要だが、個人の情報は登録が必要だ。
本国、韓国で「オーマイニュース」といえば知らない人はいないといわれるほどの存在。開始したのは2000年と比較的歴史は浅いが、当初約700人の市民記者で始まったオーマイニュースは、いまでは市民記者4万3000人を抱える巨大ニュースサイトに成長した(囲み記事参照)。「市民記者から集まる記事は毎日200~250本」(オーマイニュースニュースゲリラ本部のイ・ハンギ本部長)。
これだけの市民記者が集まれば、記者としてプロだろうが素人だろうが、一定の力を持つのは当然。情報源への接触確率は自ずと高くなるからだ(ちなみに、日本経済新聞社の国内における記者数は約1300人)。
市民メディアに立ちはだかる壁
ただ、オーマイニュース(日本版)が日本でも成功する保証はどこにもない。国内でも既に市民メディアを掲げるニュースサイトがいくつか存在する。
「オーマイニュースに刺激を受けて設立した」と語るのは神奈川県鎌倉市の元市長で、現在、市民メディア「JANJAN」の代表取締役を務める竹内謙氏。初めてオーマイニュースに出会った2001年の夏、カルチャーショックを受けたという。「21世紀のメディアはこれだ。日本でも早く作らなくては」と感じた竹内氏は2003年2月、JANJANを立ち上げる。ただ、設立当初から必ずしも韓国のような現象は起きないかもしれないと感じていたという。
ライブドアの「PJニュース」もオーマイニュースの影響を受けた。2005年末からパブリックジャーナリスト(PJ)の募集を始め、当初は1000名の申し込みがあったという。現在、定期的に執筆するのは30~40人。「拡大の壁を感じている」(ライブドアの田端信太郎シニアマネージャー)と正直に胸の内を明かす。PJの数が想定していたよりも伸びないためだ。
オーマイニュースを立ち上げた創業者で、現在、オーマイニュース・インターナショナルの社長兼CEOのオ・ヨンホ氏も、「韓国と日本では既存のメディアに対する信頼感が違う」と、日本における市民メディアの難しさを認める。
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【岐路に立つ本家「OhmyNews」の現状】 | |
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