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最近、電子書籍に関するニュースを頻繁に目にする。先日の松下電器産業、角川モバイル、東京放送(TBS)の共同事業開始に始まり(関連記事)、小学館や主婦の友社などの大手出版社や「Fujisan.co.jp」を営む富士山マガジンサービスが電子書籍事業に力を入れ初めている(関連記事)。「magabon.com」「zasee.com」などの電子雑誌サイトもここ数ヶ月で現れ始めた。電子書籍専用の端末も、ソニーや松下電器産業が2年ぶりに新モデルを発表したばかり(関連記事)。5年以上前から電子書籍に取り組んでいるイーブックイニシアティブジャパンは海外への配信を開始した(関連記事)。

 電子書籍とは文字通り、紙媒体ではなく、電子媒体で配布される書籍のこと。携帯電話やパソコン、専用の端末などで閲覧できる。専用ソフト(リーダー)で閲覧する場合が多く、ページを一枚ずつめくったり、拡大縮小が自由にできる。音楽や動画を挿入することも可能だ。

 電子書籍は何も最近生まれたものではない。ただ、パソコンや携帯電話などのハードの進化、ネットワーク技術の進化などによって現在一気に「火がついている」状態だ。

 この電子書籍、果たして「時代」が来るのだろうか。私は音楽ダウンロードのようにはいかないと感じている。小説やマンガ、雑誌をパソコンや専用端末で見る必要がどこまであるのか、いまだに疑問が残るからだ。

 音楽の場合、最終的にユーザーとの接点は変わらなかった。音楽との接点はプレイヤーである。それは家に設置してあるパソコンであったり、持ち運びに便利であるMP3プレーヤーであったりするが、この接点はCDやウォークマンの時代から変わらない。

 一方、電子書籍は接点そのものや接点の持ち方が変わってしまう。例えば、専用端末や携帯電話で見ようとすると、元々紙で見ていたものが、そうではなくなる。かといって、自宅のパソコンで見ようとすると、今までどこでも持ち歩けていたのに、場所に制限が出てきてしまう。どのみち、今までとは違った方法で見せられるようになってしまうのだ。目で見るもの、手で感じるもの、2つが変わってしまう。この変化は非常に大きく、受け入れる側にとっては壁を感じる。

 もちろん、電子書籍にもメリットはある。法令関係や医療関係など膨大な資料を必要とする職種に従事しているユーザーにとっては、これらが電子書籍化されれば、数百グラムの専用端末一つにまとめられるのだから有難いだろう。旅行に行く場合も、重い荷物(書籍)を持つ必要がなく、いいかもしれない。簡単に持ち運べるようになるというのは、電子書籍のシンプルにして最大のメリットだ。

 海外に在住する日本人が、日本の書籍を読みたいと思った際にも便利だ。現地の書店では、輸入品のため価格は数割増しになる。Amazon.co.jpなどで購入しても配送料がかなり高くついてしまう。これらのデメリットは電子書籍が払拭してくれるだろう。また、本棚のキャパシティにとらわれることなく、メモリーがある限り、好きなだけコンテンツをストックしておけるのもいい。音楽ダウンロードのように、コンテンツを好きなときに好きなだけ手に入れられる。

 これらのメリットをどれくらいの人が「自分にとっての」メリットだと思うだろうか。私は、これらのメリットでは、今までの本との接点そのものや接し方を変えてまで電子書籍を使おうというユーザーには限りがあるのではないかと考えている。

 ただ、現時点での電子書籍の市場は100億円に近い。紙の書籍市場が2兆円強であることを考えると、まだ1%にも満たない市場ではあるが、前年比2倍、今後も大きく伸びると予想されているのは確かだ。この成長を下支えしているのは携帯電話での閲覧であることも事実。若い人が抵抗なく携帯電話で小説を読んでいる現状を見ると、私の考えは紙媒体に慣れ親しんだ者の単なる「古い考え」なのだろうか。