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子供たちにプログラミングの世界を知ってもらうにはどうしたらいいのか。兼宗先生が自分の体験から、興味を引く3つの仕掛けをご紹介します。音楽からプログラミングの世界に入った酒徳氏も興味を引かれたようです。引き続き、プログラミングを巡る対談をお届けします。(編集部)

兼宗:私が開発しているのは教育用のプログラミング言語です。小学校から高校までの間に、1度はプログラミングというものを経験してもらいたいというのが開発のねらいでした。もちろん、全員がプログラマーになる必要はありませんが、プログラミングに対して「楽しかったな」とか、「10行くらいなら自分でも書けるぞ」といった成功体験は持っておいてほしい。そうすれば、大人になって必要に迫られたときに、「プログラミングならやったことがある」と、気軽に言語を学べるはずです。しかし、まったく経験がないまま大人になってしまうと、プログラミングに対して心理的な敷居ができてしまって、必要があってもなかなか踏み出せないと思います。

酒徳:なるほど。

兼宗:しかし、教えるとなると、先生側は大変だと思います。チェスの名人が、10人の相手と一度に対局することがありますよね。先生も、30人の生徒から「先生、教えて!」と頼られて、嬉しい悲鳴になるかもしれません。

酒徳:確かに大変そうですね。先生の負担を選らすためには、教材をきちんと用意してあげないといけないわけですね。

兼宗:そうですね。しかし、そこもちょっと難しいところがあります。あまりカッチリした教材を作ってしまうと、子供はそこに書いてあるとおりにしか打ち込まなくなるし、先生の方も、書いてあることしか話さなくなってしまう。そうすると、「新しいことをやるぞ」という「ワクワク感」が授業からなくなってしまい、「プログラミングなんてつまらない」などと、逆に遠ざける結果になるおそれもあります。だから、義務教育や高校までの段階では、変にプログラミングの専門的な教育をするのではなく、「楽しい」か「役に立つ」という、どちらかのイメージを持ってもらえるだけで成功ではないかと考えています。

酒徳:子供たちを相手に教えるのは、いろいろと良いアイデアがわいてきそうですね。うらやましいです。

兼宗:この頃わかってきたのは、子供によって興味の持ち方が違うということです。ドリトルから入ると、だいたい7割くらいの子供がプログラムによるお絵かきやゲーム作りに興味を持ってくれます。残り3割のうち2割程度は、プログラムを埋めこんだロボットカーを、コースにぶつからずに走らせるような授業で救えます。最後の1割は、音楽をやるとだいたいのってきてくれます。

酒徳:それはおもしろいですね。

兼宗:まず、パソコンの中でゲームを作れるというと、多くの子が興味をもってくれます。ただ、ゲームは画面の中だけの動きで表現されるので、視覚だけでとらえる世界だと、「現実感に乏しい」と感じる子もいるんですね。そういう子供には、ロボットカーという「手で触れられるもの」で関心を高めてあげることが大切です。さらに、興味を持つ対象が聴覚の子もいるというのが最近の発見です。

酒徳:音楽で1割の子の関心が呼び起こせるんですね。

兼宗:はい、音楽は大きいです。ただ、音楽をプログラムとして扱うには、単に楽譜を見て打ち込むだけでは面白くなくて、繰り返しや分岐をうまく取り入れていく必要があります。そこは試行錯誤しながら進めているところです。酒徳さんも、何かいいアイデアがあったら聞かせてください。

酒徳:たとえば、MML(Music Macro Language、コンピューター上で楽譜を表現する簡易言語)には繰り返しや分岐などがいろいろとありますよね。音楽は結局、4小節単位のフレーズの繰り返しだったりするので、同じことを何度も書くのが面倒だから、マクロに置き換えてやるというのは自然な発想ですよね。

兼宗:音楽って、そもそもそういうものですもんね。そのほかに、私が最近小中学校の先生たちと授業でやっているのはチャットです。「こんにちは」と文字列を打ってリターンを押すと、教室の別の子のパソコンに「こんにちは」と出てきます。これは単純なプログラムですが、実はこれを通して、Webや電子メール、チャットなど、さまざまなインターネットの原理を体験しています。また、このような文字のコミュニケーションは、ゲームに興味を持たなかった子供の関心を呼べることに気がつきました。特に女の子が異様に盛り上がるんですよ。言葉の感性は、やはり女性の方が発達しているのかな、なんて発見もあります。

酒徳:おもしろいですね。その熱中している子供たちが大きくなったら、というのを想像すると楽しいですね。

兼宗:そうでしょう!?教える側にもそういう楽しみがあります。

次回に続く、構成:曽根武仁=百年堂)

ゲスト:酒徳峰章(クジラ飛行机)氏1976年生まれ。中学生の頃、MSXというパソコンに出会い人生が一転。ゲームや音楽のプログラミングに没頭。現在は、ソフト企画「くじらはんど」にて、オンラインソフトを多数発表している。代表作は、ドレミで作曲できる音楽ソフト『テキスト音楽「サクラ」』や『日本語プログラミング言語「なでしこ」』など。
オンラインソフトウェア大賞2001に入賞。2004年度IPA未踏ユースでスーパークリエイターに認定される。
著書に『日本語プログラミング言語「なでしこ」ガイドブック』や『ゲームプログラミングで学習するActionScript(Flash8/MX2004)』など。ウノウ(株)にプログラマーとして参画。日本中に、プログラミングの楽しさを伝えるため日々奮闘中。(ホームページはhttp://kujirahand.com/)