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前回からお伝えしている「術のデザイン」は、環境対応においてもその成果を発揮してきた。その象徴としてここでは、1999年のグッドデザイン賞を受賞した、「リコー再製造アナログ複写機」をご紹介したいと思う。

リデュース、リユース、リサイクル。削減、再使用、再生を意味する3Rが、環境対応の基本である。最近では、環境負荷の少ないバイオマス素材の開発、プロダクトのロングライフ化、修理を意味するリフォービッシュなどのエコデザインも、序序に普及の兆しを見せ始めた。とは言え、こうしたエコデザインを、経済合理性とともに形にするのは、実に至難の業である。組み立てやすく設計すると、分解が困難になったり、リサイクルも処理や再生方法を考えるだけではダメなのだ。エコデザインをサスティナブルに形にするには、環境経営という、直言すればトップたちの頭の中身のリデザイン、事業や製品の開発設計段階から始まる、ものづくりシステムやビジネスモデルそのものの「術のリデザイン」が不可欠なのである。

時は、家電リサイクル法さえも施行されていなかった1997年。リコーは、この困難なエコデザインを集大成し、リコー再製造アナログ複写機「Spilio 5000RM」を世に問うた。冠されたRMとは、「再製造」を意味する「リマニファクチャリング」の訳語。それは、回収した同機種を再生して作られた、質量比で60%以上がリユース部品という画期的な代物であった。しかも、単なる中古機ではなく、省エネやセキュリティ対応、メーカー保証を含め、すべての点で他社の新製品と遜色のない、れっきとした新製品として堂々と発売した部分に、優れた新領域デザインとしての先見性と先進性が感じられた。そして当時は、すでにデジタル複写機が台頭していた時期である。そんなマーケットに、再生アナログ機で打って出た勇気こそ、トップの頭脳に環境経営意識が宿った証である。

開発の背景には、まず全国の再処理工場の現場を丹念に視察、分析するリサーチデザインが存在した。生産には都合の良い、ぱちんとはめ込むだけの部品が取り外しに手間がかかること。意匠性のためにネジを隠すと、分解が困難になること。そうした課題に丹念に手を打ち、規格ネジの採用と削減、デザイン処理、剥がしやすい紙製説明パネルの採用とオフセット印刷によるデザイン性の高度化、防汚性と洗浄性の高い表面シボのメーカーとの共同開発など、総合的なデザインマネジメントが実現した、記憶すべきエコプロダクトの逸品として讃え続けたいと思う。