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 ハードディスクドライブ(HDD)内のディスクが回転し始めると、ヘッドがディスク上に浮上し、データを読み書きできるようになる。ディスクを回すのはディスクの中心にあるスピンドルモーターの役目だ(図1)。スピンドルモーターが正確に、止まることなく動き続けてこそ、HDDはその能力を最大限に発揮できる。

 スピンドルモーターには、回転軸を支える軸受け(ベアリング)が入っている。最近のHDDは記録密度が上がり、トラックピッチが非常に狭くなっているため、回転軸のぶれを非常に小さくしなければ、データをうまく読み書きできなくなっている。

 数年前まで、HDDにはボールベアリング(玉軸受け)を使うことが多かったが、最近はHDDが要求する精度に対して、十分な精度を確保できなくなっている。ボールベアリングは、内輪と外輪の間に等間隔に配置した鋼球が軸を支える。内外輪と鋼球の加工精度がボールベアリングの精度を左右する。

 軸が回転すると鋼球が溝の中を転がり、回転時の摩擦を抑える(図2)。鋼球が転がっていくとき、内外輪や鋼球に凹凸があると、回転軸がぶれて振動が発生する。ボールベアリングの加工精度はμm(マイクロメートル:1000分の1mm)の単位まで上がっているが、高密度化が進んでいるHDDではこれでも不十分だ。現在のHDDのトラックピッチは0.5μmを下回る。軸受けの振動はこれを下回らなければならない。

軸受けと軸のすき間に
オイルを満たした軸受け

 ボールベアリングがHDDに適さなくなってきたところで登場したのが、流体軸受け(FDB:Fluid Dynamic Bearing)だ。軸と軸受けの間に流体(オイル)を満たしてある。

 FDBはモーターが発生する回転エネルギーを利用して軸を支えている(図3)。モーターが回転すると、流体に流れが発生する。軸受け内面には深さ10μm程度のV字型の溝が彫ってあり、流体はこの溝に流れ込む。回転方向がV字の頂点になるため、流れ込んだ流体がV字の頂点に集まり、この部分に高い圧力が発生する。この力で軸を支えるのだ。

 図3で示したFDBは、回転軸を径方向に支持する円筒型のFDBだ。スピンドルモーター内では、回転体を完全に非接触で支持するため、円筒形のFDBと平面型のFDBを備えている。平面型のFDBは図4の矢印部分や、回転軸の底面にあり、軸を上下方向に支えている。図4では、軸が回転するタイプのスピンドルモーターを示したが、軸を固定して軸受けを回すタイプのスピンドルモーターもある。