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「なんだかなあ、どこがいけないのかなあ、文句ばっかり言われても、さっぱりわかんないよなあ」
 ミヤモトくん、何をブツブツ愚痴ってるの?
「おー、ナカノくん! いやー、なんかさあ、ケチつけられてるんだよ、珍しく真面目に仕事したのに」
 自分で“珍しく真面目に”って…まあ正直でいいけど。何の仕事?

「ほら、社内ネットにアップした、サンプリング調査の予定表だよ」
 えっ。あの、きれいな一覧表? あれ、ミヤモトくんが作ったの? ウソ!
「ホントだよ」
 ウソー! 社内で一、二を争うワード下手のミヤモトくんが、あんなにきれいな表作れるわけないじゃない?
「作れるんだよ、それが。ネットのページはワードじゃなくてHTMLで作るから」
 ウソー、ミヤモトくん、HTML使えるの?
「使えるよ。高校生の頃からHTMLでコツコツ自分のホームページ作ってたんだよ」
 えー、ウソー! ウソー!

「あのね、同期入社以来、キミに怒られるのは慣れてるけど、そんなにウソウソ言われると、ちょっと悲しくなるなあ」
 やだー、何言ってるの! やめてー! いつもとキャラが違うー!
「とりあえず、信じてくれ。HTMLは使える。ホームページ作成ソフトを使わなくても、きれいなページを作れる」
 にわかには信じがたいけど…わかった、信じる。じゃあ、仮に、もし、本当にあなたが作ったんだとしたら、
「信じてないじゃん」

 ごめん、信じる。あのページ、すごく見やすかったし、一覧表の色分けもセンスいいし、文句言われるところないと思うけどな。
「それが、秘書課から文句来ちゃったんだよ」
 えー、秘書課? わたしの部署?
「そう」
 なんて?
「『ちゃんと表組みにしてもらわないと困ります』って」
 表組みに…なってるわよね。
「だろう?」

 どういうことかしら…? 秘書課であのページを使うとしたら…あ、そういえばあのサンプリング、評判がいいから参考にしたい、っていうクライアントさんが結構いるって聞いたわ。印刷して郵送するのかも。
「印刷すればいいじゃん。印刷しても見やすいように、色味を落として薄くしてあるんだよ。そういう工夫を何だと思ってるんだろうね、秘書課の連中は」
 …ねえねえ、あの表、枠線がなかったわよね?
「うん、枠線が見えるとダサいじゃん。だから枠線なし、黄色、水色、薄紅色、って、色使いだけでセルのコマ割りを表すように作ったんだ」
 …あー、わかった! それを印刷すると、表だかなんだかわからなくなっちゃうのよ!
「おいおい、キミの言ってることがわからないよ」

 いい? ミヤモトくんの作った表は、線がなくて色だけでセルを見分けるようになってるのよね?
「そうだよ」
 インターネットエクスプローラーを設定を変えずに使ってるとしたら“背景を印刷しない”設定になってると思うの。
「あー…。でもさ、ボクは背景なんか使ってないよ。背景って、ページのバックに柄とか色とかつけるやつだろ?」
 背景はそれだけじゃないわ。表組みの色も“背景色”よ。
「あっ! そうだ! 表の中の色を指定するとき「BGCOLOR」って書くんだった! バック・グラウンド・カラーだ!」
 だから、画面で見たらきれいに色分けされた表だけど、印刷したら枠線も色分けもなくて、真っ白なところにポツン、ポツンと項目が並んでるだけの文書になっちゃったのよ。
「なるほど。そりゃ、表に見えないな」

 いいわ、わたしが秘書課に戻ったら、設定を変えて印刷するように言っておく。
「ありがとう、ナカノくん。あー、助かった。クレームの意味がわからなくて途方に暮れてたんだ。お礼に今夜一杯、どう?」
 えー。
「ダメ?」
 一杯だけじゃ、やだなあ。
「わかってるよ。何杯でもどうぞ」
 わーい、やったー♪ 寒いから熱燗にしようかなあ、お湯割りにしようかなー♪ 楽しみだなー♪