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 ウェブ2.0の次に訪れる「ウェブ3.0」はいったい何かという話題が、そこここで聞かれるようになった。

 ウェブ2.0は、個々のユーザーがつくるコンテンツが大きな知識空間となって、ユーザーの次の活動や思考にフィードバックされるといったこと。あるいは地図などひとつのサービスの上にさらに別の情報を簡単にオーバーラップせることができるといったようなこと。いずれにしても、1対1の関係だったウェブがもうひとつ上の段階へ進んだことを表している。

 そもそもウェブ2.0という表現を練り出したのは、テクノロジー関連書籍の出版社を経営するティム・オライリーだが、ちょうど1年ほど前にこの問いを投げかけた時の彼の答はこうだった。

 「ひとつは、テキストだけでなくビデオ、音声など、リッチなマルチメディアをシェアするようになることでしょう。これは大きな変革を起こすはず。そしてもうひとつは、モノのインターネット。身の回りのあらゆるモノにIPアドレスがつけられ、センサーが埋め込まれるようになると、デバイスがインテリジェント化される。そうすると人がコンピュータとインタラクトするだけでなく、デバイス同士がもっとインタラクトするようになる。自律的な乗物も出てくる」

 「ふーん、ビデオねえ」とその時は思ったが、この1年の間にYouTubeをはじめとした動画の共有サイトが急速に人気を集めるようになったのは予想を超えていた。後者のモノのインターネットは、すでにそのシステムのシンプルなものが商品をトラッキングするRFIDタグなどで商用化されている。車が高速道路を自動走行するしくみ、高齢者の薬品容器を管理するしくみなど、さらに複雑なシステムは大学の研究所などで実験中だ。

 オライリー自身は、テクノロジーやインターネット上で起こりつつあるパターンを読み取り、それを分析することを楽しんでいるという。「ウェブ2.0」もそこから出てきたのだが、このことばがひどくバブル化してしまったことには心底驚いているようでもあった。「何か名前をつけたからって、それがまた人気になるようなトリックがいつも起こるとは限らないけれどもね」と、ウェブ3.0を説明しながら苦笑いしていた。

セマンティック・ウェブ? 三次元共同作業?

 実際、ウェブ3.0は2.0よりももっと多方向に広がっていく可能性もある。セマンティック・ウェブと呼ばれる次世代のウェブもウェブ3.0だと言われている。セマンティック・ウェブは、もともとWWWのしくみを発明したティム・バーナーズ=リーが提唱している概念で、彼のことばを借りると「データ・ファイルが網目状につながったもの」ということになる。現在のHTMLはドキュメントのネットワークだが、その下層にあるデータベースが相互につながるとどうなるのか。

 バーナーズ=リーが説明してくれたのはこうだった。

 「セマンティック・ウェブはウェブ上に単一のデータ構造ができていて、そこでのプロセシングが背後で自動的に行われるというものです。データのソースさえ特定しておけば、その後はいろいろなデータをごく普通にプロセスできる。たとえば、カレンダーのアプリケーションをデスクトップで走らせていれば、「自分の好きなバンド」が「晴れた日に」コンサートをやっている「場所」を即座に知ることができたりするのです」

 あるいは、自分の銀行口座の情報を引き出すと、同じような収入を得ている人々がどんな投資をしているか、あるいはどんな税金対策を講じているかといった情報が同時に呼び出される。今は求める情報を探してあれこれのサイトの間を飛び回っているわけだが、そうした作業をデータ同士が連携してやってくれるため、われわれの前には最後の結果だけが自動的に呼び出されるということになる。

 バーナーズ=リーによると、現在セマンティック・ウェブに目をつけているのは生物化学領域の研究者たちらしく、新薬開発などですでに用いられているという。2008年には、エンタープライズ市場で何らかのかたちのアプリケーションが生まれるはずだと彼は希望しているようだ。ウェブ1.0から2.0までかかったのがほぼ10年。壮大な構想だが、本当に2008年に陽の目を見るのなら、ウェブ自体が加速化している証拠になるだろう。

 また、三次元の共同作業ツールがウェブ3.0であるという別の見方もある。バーチャル・リアリティ空間でユーザーが集う。すでにインターネット・ゲームでは起こっていることだが、ここにさらにさまざまなメディアやデータが統合されるという図だろうか。この手のウェブ3.0は、企業が消費者に商品体験をシミュレーションしてもらうためにも用いられるという。

 だが、きわめつきのウェブ3.0観にこんなものがあった。あるエンジニアのブログから派生したコメントである。

 「ウェブ3.0? ノーサンキュー。僕はもう放っておいてほしい。ソーシャル・ネットワークなんかくそくらえ。アンチ・ソーシャルネットワークこそ、次のウェブ3.0だ!」