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 通信事業者3社による矢継ぎ早の新製品投入、ワンセグ端末や音楽ケータイの普及、NECと松下電器産業による携帯電話開発の合弁会社設立、ソフトバンクによるボーダフォン日本法人の買収劇と「予想外割」、そして携帯電話番号ポータビリティー(MNP)制度の開始――。2006年の携帯電話業界では大きなニュースが相次ぎ、話題に事欠かない1年でした。しかし水面下では、端末メーカーや通信事業者の苦しい台所事情も漏れ伝わってきます。2007年も2006年のように華やかな話題ばかりが出るかというと、そうでもなさそうです。

次の買い替え需要は2008年

 MNPの開始を契機に、店頭では端末を買い求めるユーザーで大いににぎわいました。電気通信事業者協会(TCA)の携帯電話契約数統計でも、MNPをきっかけとして多数のユーザーが買い替えに動いたことがうかがえます(関連記事)。とはいえ、MNPはあくまで一時的なカンフル剤に過ぎません。かつて固定電話で通信事業者選択サービス「マイライン」が始まったときと同様、数カ月経過するとユーザーの関心は急速に薄れていく可能性があります。

 私個人は、携帯電話市場が新規契約・機種変更ともに最も盛り上がる3月~4月の新年度商戦が過ぎると、MNPによる買い替え需要は一服すると見ています。通常、携帯電話の平均買い替え期間は1年半~2年程度なので、順当に行けば、次に買い替え需要が盛り上がるのは2008年の北京五輪商戦前後になると予想されます。買い替えサイクルが低迷する中で市場を活性化させようとするならば、通信事業者や端末メーカーがよほどの新機軸を打ち出す必要がありそうです。

 端末をめぐっては、通信事業者とユーザーとの間に広がりつつある意識のずれが拡大する可能性もあります。2006年に発売された端末では、携帯機器向け地上デジタル放送「ワンセグ」の受信機能や音楽再生機能を備えた製品が市場をけん引してきました。しかしワンセグも音楽も、携帯電話のデータ通信機能の利用を促進する機能とはなっておらず、あくまでスタンドアロンの端末として携帯電話を利用しているに過ぎません。ユーザーが端末を使う時間は限られていますから、ワンセグ端末や音楽ケータイの普及が進むにつれ、今後データ通信の利用時間が減少するといった事態が起きないとも限りません。

携帯電話を活性化できる2つの潜在力

 私個人は、2007年以降の携帯電話業界を再び大きく盛り上げられる潜在力は、2つあると考えています。1つは販売奨励金(インセンティブ)制度からの脱却、もう1つは通信技術の発達です。

 インセンティブ制度については、2006年にもこの「記事の芽」欄で紹介しました(関連記事)。インセンティブ制度と不可分の課題として、端末に掛けられているSIMロックの問題もあります(関連記事)。

 もちろん、KDDI社長の小野寺正氏が指摘するように、インセンティブ制度がワンセグ端末をはじめとする新機能や新サービスの普及において果たす意義は大きく、そうした役割は今後も期待できるでしょう(関連記事)。とはいえ現在の日本の携帯電話市場では、端末メーカー同士が純粋に製品の機能や性能、そして開発・製造コストで競争することができないという弊害も大きくなっています。特にコストについては、これまで国内市場では通信事業者の保護の下、ほとんどユーザーに公開されることがありませんでした。そのことが結果として、海外の携帯電話市場で日本の端末メーカーが勝てない原因になっていると私は考えています。国内市場が成熟に向かっている今こそ、これまでの事業モデルを見直す絶好の機会と言えるでしょう。

 通信技術の発達については、現在各社が実験を進めているモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)が次の本命です(関連記事)。モバイルWiMAXが実現すれば、限られた資源である電波の利用効率が上がり、同一の周波数帯域でより多くのデータを伝送できるようになります。現行の3Gより通信速度が速くなることもメリットの1つですが、パソコンユーザーにとっては、PHSより高速で、かつ定額制のデータ通信が、モバイルWiMAXで実現し得るという点に注目したいところです。

 モバイルWiMAXの商用化は2008年の下半期と言われており、それまでに乗り越えるべき課題はまだ多くあります。通信事業者各社がモバイルWiMAXによる通信サービスを提供するためのノウハウを蓄積する必要がありますし、電波利用に関する法令の整備、総務省からの許認可、通信設備や端末の開発なども必要です。ただし、これを裏返せば、2007年はモバイルWiMAXの商用化に向け、各社の準備動向に関するニュースが多く出てくることが予想されます。こうした動きの1つひとつをじっくり見ながら、新たな技術の誕生に期待していきたいと思います。