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 映像配信サービスと動画投稿共有サービス。この似て非なる2つのサービスはまったく異なる成長を遂げてきました。

 簡単に説明すると、映像配信サービスとは、映画やドラマといったコンテンツをインターネット経由で配信するというもの。パソコンで視聴するものもあれば、セットトップボックスを接続してテレビで視聴するものもあります。広告収入をベースに無料で視聴できるものもあれば、視聴者に課金する有料サービスのものもあります。一方、動画投稿共有サービスは一般のユーザーが作成した動画をインターネット上にアップロードし、ほかのユーザーも視聴できるもの。こちらは無料のものがほとんどです。

 動画投稿共有サービスは、それまで少しずつ成長してきた映像配信サービスから世の中の注目を一気に奪いました。映画配信サービスは著作権の保護に注力しながらコンテンツプロバイダーの理解を得つつ、少しずつ、確実に成長してきました。一方の動画投稿共有サービスは、著作権侵害コンテンツに反対の姿勢を見せるとはいえ、違法コンテンツも抱えながら急激に成長を遂げました。

 この成長速度が異なる背景には「事前処理」「事後処理」の違いがあります。映像配信サービスは、言うなれば既存産業から生まれたサービス。映画やテレビで流しているコンテンツの新たな流通先としてインターネットという市場を開拓しようとしているものです。当然、権利処理については曖昧にできるはずもなく、事前にさまざまな著作権保護技術、交渉などを重ねてコンテンツの数を増やしてきました。

 一方、動画投稿共有サービスは、ネット企業が主に手がけています。彼らの考え方は、基本的に「事後処理」。つまり、違法なものが生まれた場合には後から厳重に取り締まるといった発想です。「YouTube」が急激な成長を遂げた理由に、違法コンテンツの存在があったといっても過言ではないでしょう。

企業にとっては諸刃の剣

 ただ、この状況も今年は変わるはずです。YouTubeはJASRACをはじめとする国内の23の著作権関係権利者団体・事業者が著作権侵害防止策を申し入れるなど、著作権侵害が問題となってきましたが、これは今年は解決に向けて動き出すでしょう。YouTube側がかなり協力姿勢を見せているためです。

 では、仮にすべての違法コンテンツがYouTubeから消えるとして、YouTubeから今の存在感が消えてしまうのでしょうか?私は、依然として影響力を持ち続けると思っています。なぜなら、現時点でも既存産業に十分の影響を与え、変革を起こしたからです。米国のテレビ局がYouTubeに対して批判の姿勢から、共存の道を模索する姿勢に変わったように、既存産業に対して十分過ぎる杭を打ちこんでいます。

 さらに、もっと大きな理由は、ユーザーに表現の場を作ったことです。今年はこのユーザーが創り出すコンテンツが動画投稿共有サービスの影響力をさらに増していくはずです。これは既存産業にとってプラスとマイナスの両面があるでしょう。

 例えば、動画によるアフィリエイトは遅かれ早かれ始まるでしょう。つまり、商品をユーザー自身が動画で紹介する、そこから販売に結びついた売上の何パーセントかが紹介動画を作成したユーザーに落ちるといったものです。あの手この手の面白い動画をユーザーは創り出していくでしょう。企業は動画投稿共有サービスという新たなインフラを使って、販売チャネルを増やすことができます。

 半面、商品の欠陥やマイナス面を強調する動画も次々と出てくるはずです。実際、YouTubeには任天堂が発売したばかりのWiiのリモコンの危険性を指摘する動画が数多くアップされています。以前、某ファーストフードを食べ続けるとどうなるかを監督自身が実践するというドキュメンタリー映画がありました。この手の動画は企業にとって新たな頭痛の種となっていく可能性があります。

 このように、動画投稿共有サービスは「商業性」「ジャーナリズム性」というメディアにとって必要不可欠な2つの側面を持ちながら成長していくでしょう。

 ただし、動画投稿共有サービスもいまだ明確なビジネスモデルが描けていないのが現状。動画広告によるモデルを早期に確立したいのが本音でしょう。そうなると、同じく動画広告を柱に無料で展開する映像配信サービスとの競合は避けられません。

 この両者の戦いが今年は熱を帯びていくと見ています。