PR

 私はこれまで、さまざまなリーダーシップ・トレーニングを受けてきました。デルでは、現会長のマイケル・デル本人から教えを受けたこともあります。その経験は可能な限り部下にシェアしていましたし、それがさらに下の人間にも伝わっていきました。内容が少しずつ薄まってしまうのは仕方ありませんが、それでも伝えていくことができるのは、トレーニングがシステマチックにできているからです。

 リーダーシップ・トレーニングは思いつきではなく、まずはしっかりとしたプログラムを準備することが重要です。事業計画と同じように綿密に作り込み、後は気長に何度も繰り返して実施する。そうすることで、企業の文化が組織の末端まで正しく伝わっていくのです。

 デルの場合は、数万人規模のグローバル企業へ成長し、会社の文化を攻撃的なものからより成熟したものへと変える必要が生じたときに、マイケル・デルが自ら先頭に立ってリーダーシップ・トレーニングの仕組みを改革しました。そこでは、リーダーが身につけるべき能力が事細かに、体系的にまとめられました。ユーザー視点での戦略立案ができること。正しい決断を迅速に下せること。部下のモチベーションと能力を高めること。活力あるチーム作りをすること。才能のある人間を採用し、適切に配置すること。自分のエゴをコントロールすること……。こうしたトレーニングが人事評価システムに組み込まれ、役員クラスも含めて、全員が年に一度調査されました。部下への意識調査という形で行い、結果は要素ごとに点数化されます。「この分野は全体的に高得点だけれど、ここだけが弱点になっている」など、細かく数値が出てくるんです。

弱点ではなく「Room for Improvement」

 正確には、弱点といわずに「Room for Improvement」「Area for Improvement」という言い方をしていました。評価するだけで終わらずに、改善の余地があると判断された点に関しては、改善のための具体的なアクションプランを作成するんです。たとえば「エグゼクティブ・コーチを付けよう」とか、あるいは「何かいい結果が出たときには、かならずThank youメールを出して、会議の時に表彰しよう」とか、さまざまです。

 もちろん、ほかにもさまざまな角度から評価を行いますが、その際にもこの評価はよく参考にします。たとえば、非常に良い成績を上げているマネジャーがいるが、どうも周囲からの雑音が絶えない。リーダーとして問題があるという声がちらほら耳に入ってくる。実際に部下の離職率も少しずつ高まっている。そして評価を見てみると、確かにビジネスをドライブするのはうまいが、一人ひとりのケアができていないことが数字に表れていたりします。そういうときには、「週に5回は、直属の部下と1対1で最低30分間話し合う時間を作って、悩みや問題点を解決してあげよう」などといったアドバイスを行います。

 日本では、社長が自ら人事部やコンサルタントなどと一緒になってトレーニング・プログラムを作る例は少ないように見受けられます。GEやサムスンなどが特に有名ですが、世界トップクラスのグローバル企業は、社長自身が役員の前に立って語り、その役員たちが現場に戻って下の人間にも伝えていく、という仕組みをシステマチックに整えています。良い点は見習い、日本へ持ち込むべきです。

 デルと比べれば規模は小さくなりますが、リヴァンプでも、私は部下へ直接トレーニングをしています。今後リヴァンプが1兆円企業になっても、自分でやり続けるでしょう。共同で代表パートナーを務めている沢田や玉塚もそうです。三カ月に一度の合宿では、私たちが自分でプレゼン資料を作成して話すことも多々あります。もちろん自分たちだけ話しても仕方がないのですが、リヴァンプの理念や精神について、自分の言葉で、従業員へ直接語りかけることは非常に重視しています。

(構成 曽根武仁=百年堂)