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 デルにいたときには、日本を代表するグローバル・マネジャーとして、どうすれば成長できるかを真剣に考え続けました。私は仕事をする上でお金を優先したことは一度もありませんでしたし、おそらくこれからもないでしょう。努力をしていれば、昇給や昇進といったものは後からついてくるものです。人はまず謙虚でなければなりません。振り返ってみると、大きな問題が持ち上がったときには、いつも周りの人間に助けてもらいました。

 私はデルで日本法人の社長をしていましたが、同時に韓国、中国北部を統括するノースアジアのトップでもありました。この3つの地域から本部長直前の優秀な人間を30人ほど選抜し、東京のセミナーハウスに1週間缶詰めにして、リーダーシップのトレーニングをしたことがありました。そこでは私も講演し、自分の経験から学んだことを直接伝えました。今回は、その時に私が話したことを少し紹介させていただきます。「お前たちはアナキン・スカイウォーカーになってはだめだ」と私は彼らに語りかけました。

 アナキン・スカイウォーカーは映画「スター・ウォーズ」の主人公で、後にダース・ベイダーになります。ジェダイの騎士を目指していたのに、愛する者を失うおそれと、早くジェダイになりたいという欲望が強かったために、皇帝につけ込まれ、ダークサイドに落ちてしまったんです。その話を引き合いに出して、お前たちはアナキン・スカイウォーカーになってはいけない。今の地位を失いたくないというおそれもあるし、リーダーとしてさらに成長しようという欲望もあるが、決してダークサイドへ落ちてはならない。そして、私はお前たちをダークサイドへは決して落とさず、ジェダイにするつもりだと話しました。

リーダーは最初に戦場に降り立ち、最後に引き上げる

 それから、リーダーシップのなんたるかを教えるために、「ワンス・アンド・フォーエバー WE WERE SOLDIERS」という映画をアジア・太平洋・日本地区の最高幹部社員たちで一緒に見に行ったり、日本の幹部社員たちにも見せました。ベトナム戦争の実話を元にした非常にリアルな作りの映画で、残酷なシーンもあるので希望者だけを連れて行ったんですが、私はその主人公、メル・ギブソンの演説が好きなのです。

 映画の中でメル・ギブソンは、アメリカの片田舎にある陸軍基地に勤務しており、彼の部隊がベトナムに出征することになります。彼は隊長として、まだ二十歳にもならない若者や、結婚したばかりの兵隊など数百人を引き連れて戦場へ乗り込まなければならない。その出陣の前夜、彼は隊員とその家族を呼び集め、演説をします。

 戦場に降り立つとき、最初にヘリコプターから降りるのは俺だ。戦場を去るとき、最後にヘリコプターに乗るのも俺だ。俺が常に最前線に立つ。絶対に、誰1人として戦場に置き去りにしない。生きていようと死んでいようと、とにかく全員を必ず家に連れて帰る。みんなで一緒に家へ帰って来よう。

 そんな内容の話をするんです。こうして思い出しても涙が出るほど、感動的なシーンでした。これこそまさに、リーダーに求められる精神です。非常に含蓄に富んだシーンでした。リーダーというものは、時に非常につらい決定をしなくてはなりません。絶対に最後まであきらめず、やるといったら最後までやり通さなければなりません。そして、危機こそが真に偉大なリーダーを育てるのです。毎日平和だったら、偉大なリーダーなど生まれません。そういう、私が考えているリーダー像が映画ではうまく描かれていました。

 DVDが出ているので、是非ごらんになってみてください。リーダーに求められる心構え、気高さが非常によくわかる映画です。ただし、かなり残酷なシーンがありますし、あの戦争自体は政治的・人道的に議論多いでしょうが……。

(構成 曽根武仁=百年堂)