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 「1984年、ビットマップディスプレイを採用して誰もが優しく使えるパソコン、Macintoshを投入。2001年には新しい音楽の楽しみを経験してもらうiPodを紹介。そして2007年、本当の使いやすさを追究した結果生まれたiPhoneを投入する。こうした会社にふさわしい名前は何であるかを考え、Apple ComputerからComputerの文字を外すことにした」

――毎年頭に開かれるマッキントッシュ専門の展示会Macworld Expo & Conferenceの基調講演で米Apple Computerのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)が、Appleはこれから人々の生活体験をより素晴らしいものにするための会社になると宣言、新生Appleの誕生を宣言した。

 この日、ジョブズ氏が発表した内容は大きく次の4つ。

1)iTunes Storeの映画供給会社としてパラマウントが新規参加。同オンラインストアは米国で20億曲を販売、1日の売上は500万曲、TVショウは350タイトル、映画は250タイトルに至ったと発表。音楽産業、映画産業のあり方を変えた点を強調した。

2)家庭用のテレビに接続して無線LANでパソコンとコンテンツをやり取りするハードディスク内蔵のセットトップボックス「Apple TV」を2月に発売。

3)iPod、フルブラウザー、文房具ソフトなどを搭載し、タッチスクリーンを採用した「iPhone」を6月に発売。米国では携帯電話ビジネスパートナーとしてCingular Wirelessと提携。

4)社名のApple Computerから、Computerの文字を削除する。

 1から3に関しては国内ではサービスが限定されているか使えないものが多く、国内読者にはインパクトの薄い発表だったが、随所に旧態のビジネスモデルを根底からくつがえす起爆剤が仕込まれており、見逃せない。

写真1 新機軸のセットトップボックス「Apple TV」を紹介するスティーブ・ジョブズCEO(撮影:三井公一=サスラウ)

著作権管理は利便性優先

 新開発のApple TVはコンテンツの入手・管理の母艦として「iTunes」を用いる。720p仕様のハイビジョン映像を5台までのパソコンにストリーミング配信できるほか、コンテンツのバックアップやコピー(パソコン5台まで)もできる点に注目だ。

写真2 Apple TVの操作画面。家庭用テレビに接続してパソコンのコンテンツを再生。ストリーミング配信機能も持つ(撮影:三井公一=サスラウ)

 日本の常識では、ハイビジョン映像の複数端末への同時配信やバックアップなど論外。パソコン用デジタル放送録画装置にはバックアップを取れるものもあるが、同一マシンでの再生が大前提だ。それに対しApple TVでは、任意の場所に任意の数だけバックアップが取れ、しかも無線LANを通じて5台のパソコンで同時再生が可能。再生可能パソコンは認証登録されるため、不正コピーの不特定多数への配布を防げる。

 このようにユーザーの利便性第一に考えられた著作権管理の仕組みは今後、米国から広く世界に広がっていくだろう。権利を侵害せず、流通の規模を拡大させ、権利者が潤うビジネスモデル。巨大な映画配信ビジネスを牛耳るハリウッドの映画産業がiTunesをハブにすえたApple TVなどを容認し、積極的に配信タイトルを増やし始めているため、波は一気に世界に広がるはずだ。パッケージメディアを収益の柱にすえた日本の映画、音楽産業に程なく深く浸透、多くは業態変革を迫られることになる。