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 今回は、オフィスや学校で広く利用されているLANの一つ、イーサネットについてその歴史と原理を見てみましょう。

発端はパソコンとプリンタの接続

 イーサネットは1973年、米XeroxのPalo Alto Research Centerにある研究所で、研究員のロバート・メトカフによって開発されました。当時この研究所では、最初のパーソナル・コンピュータである「Alto」が開発されていました。ここでAlto同士を接続したり、同時に開発中であった最初のレーザー・プリンタとAltoを接続することが必要になりました。メトカフに与えられた課題は、これらを実現する新しいコンピュータ・ネットワークを開発することでした。

 当時のネットワーク技術は、同時に数台のコンピュータを接続するのがやっとという状態でした。メトカフが目標としたネットワークには、(1)同じ建物内にある数百のコンピュータを接続すること、(2)新しいレーザー・プリンタの能力を発揮できるだけの高速通信が可能であること――が求められました。そしてメトカフは見事にこれら課題を達成しました。このときイーサネットの原型となる技術が誕生したのです(pict.1)。

 メトカフは1979年にイーサネットの仕様を取りまとめました。この仕様は、イーサネットの開発に協力した米DEC、米Intel、Xeroxの頭文字をとってDIX規格と呼ばれています。

 その後、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)という米国の学会がIEEE802委員会というLANの開発組織を発足させ、その傘下のIEEE802.3作業部会がイーサネット規格を標準化しました。

 IEEE802.3が最初に開発した標準仕様の伝送速度は10Mビット/秒でした。それ以降、IEEE802委員会ではイーサネットの高速化を図り、100Mビット/秒や1Gビット/秒の仕様を開発しました。高速化の研究は今でも続けられており、現在は10Gビット/秒の仕様を作成中です。

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 メトカフが作ったネットワークは,当初「Alto Aloha ネットワーク」と呼ばれました。それは,「Alto」というパーソナル・コンピュータを接続するために作られたこと,「Aloha」という無線パケット方式の衛星通信技術を基礎としていたからです。
 メトカフは,その後1973 年に「イーサ」(Ether)と名前を変えました。それはAlto 同士を接続するだけでなく,あらゆるコンピュータが接続できるネットワークを目標にしていることを表明するためでした。
 Ether(エーテルとも読みます)とは,かつて“宇宙に満たされていて,電磁波を伝える”と信じられていた仮想物質のことです。この物質のように,イーサネットはすべてのコンピュータに情報を伝えるネットワークとなることを目指したのです。