PR

 今回から十数回で、TCP/IPの基本的な技術をじっくりと説明していきます。まずはTCP/IPの概要を解説しましょう。

応用層から受け取ったデータを転送する

 TCP/IPの基礎となる技術は1970年代の初頭、米国防総省の研究所「ARPA(アーパ)」で生まれました。研究所内に構築されたパケット交換ネットワークARPANET(アーパネット)のために開発されたプロトコル群がそれです。TCP/IPの普及が本格的に始まるのは1980年代、UNIX OSで動作するワークステーションが大型計算機にとって代わり始めた時代です。UNIXはTCP/IPを標準の通信プロトコルにしていました。

 TCP/IPは、パケットの再送処理やフロー制御を行うTCP(Transmission Control Protocol)と、パケットを適切な経路を使って転送するIP(Internet Protocol)に分かれます。それぞれの機能をOSI基本参照モデルに当てはめると、トランスポート層(第4層)とネットワーク層(第3層)に該当します。

 TCPの役割は通信の品質を保証することです。TCPはトランスポート層の上位で動作する電子メールやファイル転送といった応用層のプロトコル群からデータを受け取り、データを誤りなく効率的に相手先に転送できる形でIPに託します。IPは適切なネットワークを経由して相手先にデータを送り届けます。IPには伝送媒体の違いを吸収し、上位層に意識させない役割もあります。

 TCPと関連するプロトコルに、UDP(User Datagram Protocol)があります。TCPは通信に先立ってコネクションと呼ばれる仮想的な通信回線を確立して通信品質を保証します。UDPはコネクションを持たず、誤り制御を行いません。IPの機能をそのまま応用層に見せるためのプロトコルといえます。信頼性は落ちますがコネクション確立が不要なので負荷が軽くなる利点があります。TCPとUDPは用途に合わせて使い分けられています(pict.1)。

拡大表示
 TCP/IPをOSI基本参照モデルに当てはめると,トランスポート層(第4層)とネットワーク層(第3層)にあたります。
 トランスポート層の役割は,誤り制御やフロー制御を行って通信の品質を上げ,信頼性が高く効率的な通信を実現することです。
 ネットワーク層の役割は目的とする計算機までパケットを配送することです。
 電子メールやファイル転送などの応用プロトコル群は,トランスポート層の上位で動作します。LANや電話回線といった通信媒体は,第2層以下にあたります。さまざまなアプリケーションとさまざまな通信媒体をTCP/IPプロトコル群がつないでいるのです。その姿をワイングラスに見立てて説明するのが「ワイングラス・モデル」です。TCP/IPプロトコル群の中でIPがワイングラスのくびれの部分に当たるのです。