PR

 今回からはコンピュータ・ネットワークを学ぶ上で欠かせないキーワードの一つである「OSI(open systems interconnection=開放型システム間相互接続)基本参照モデル」を解説していきましょう。OSI基本参照モデルはOSI7層モデルとも呼ばれ、ネットワークの技術を機能で分類するときや、動作を説明するときに便利なモデルとして使われています。

国際標準のアーキテクチャとして開発

 コンピュータ同士がネットワークを介して通信するためには、さまざまな決め事、つまり「プロトコル」が必要になります。さらに、コンピュータ同士で通信するには、使う場面や機能ごとに異なるプロトコルを体系化することも重要です。プロトコルを体系的にまとめたものを「ネットワーク・アーキテクチャ」と呼びます。

 OSIは、今から24年前の1978年2月にISO(international standard organization=国際標準化機構)が国際的な標準として検討を始めたネットワーク・アーキテクチャです。

 当時のコンピュータ・メーカーは、IBM社のSNA(systems network architecture)のようにそれぞれ独自のネットワーク・アーキテクチャを使ってコンピュータを接続していました。こうした状況では異なるメーカーのコンピュータを相互接続するのが困難です。

 また、米国の軍事用ネットARPAnetアーパネットに起源を持つパケット交換サービスが世界的に提供され始めたのもこの頃です。「X.25」と呼ばれるパケット通信規格が制定された影響です。

 こうした背景から、異なるメーカーのコンピュータを簡単に相互接続でき、最新のデータ通信方式であるパケット交換技術を使った標準の通信方式の必要性が国際的に望まれました。そこで開発されたのがOSIというわけです。

機能の階層化が重要なコンセプト

 OSIの重要なコンセプトは機能の階層化にあります(pict.1)。階層化はネットワークのための通信機能を体系的に整理し、将来の機能追加や技術の進歩に対応しやすくします。

拡大表示
 OSIの重要な考え方の一つにネットワーク機能の階層化があります。図ではオレンジ・ジュースを作る作業を示していますが,一人で全部やるより,分担した方が一人一人の仕事は単純化されます。仕事を分けておけば具合が悪くなった人だけを交代させることも可能です。
 効率的に階層化するための要点は三つあります。まず,なるべく少ない通信プロトコルで全体を構成すること。次にそれぞれの層の間のやり取りがもっとも少なくなる部分で層を分割すること。最後に技術革新に対応しやすくするために,ある層が別の層に依存して動作することがないようにする(層の独立性を確保する)ことです。