4月から続いてきたOSI基本参照モデルについての解説は今月で最後になります。先月、第4層を解説しましたが、今回は第5層から7層までをいっぺんに説明します。第5層から7層はアプリケーションの通信機能を規定する階層です。
アプリケーションの仕事を分担
OSI第5層から第7層は第4層(トランスポート層)がアプリケーション間に提供する仮想的な通信路の上で動作し、それぞれセッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層と呼ばれています(pict.1)。第5層と6層はアプリケーションの作業を分担するように働きます。
第5層のセッション層の機能は「セッション」の管理です。第4層が提供する仮想的な通信路の利用開始から終了までをセッションと呼びます。セッション層はセッションをアプリケーションの状況に合わせて確立、維持、切断する役割を担います。
第6層のプレゼンテーション層は、データの表現形式の異なるコンピュータ間で、伝達する情報の意味を変えずにデータを変換する方法を提供します。端的な例が文字コードです。漢字や仮名をテキスト・データとして表現する文字コードにはいくつか種類があります。
プレゼンテーション層は例えば、これら異なる文字コードを使うコンピュータの間で文字化けを起こさないようにデータを受け渡すように働きます。いわば翻訳です。通常プレゼンテーション層では、データの形式をいったん標準的な形式に変換してからデータを送り、届けた先では標準的な形式から、そのコンピュータ用の形式に変換するという方式を取ります。
最上位のアプリケーション層(第7層)は、直接ユーザーが利用するプログラムの機能を規定する階層です。例としてはファイル転送があります。異なるOSを採用したコンピュータ間でネットワークを経由してファイルを転送するには、OSの違いによるファイルの扱いの差――ファイル操作の命令やファイル名の扱いなどの違い――が問題になることがあります。第7層のプロトコルはこうした違いを吸収します。