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 「Web2.0時代の地域のあり方に関する研究会」シリーズの最終回は、第3回の研究会の様子と、報告書のまとめに向けて、Web2.0時代に地域がやるべき課題を示したい。

 第3回の研究会には、知多メディアスネットワーク(株)の山本隆明さんが参加した。山本さんは「ちたまる」という人気ポータルサイトのコンテンツ企画制作グループのリーダーである。データを融合できるWebを中核にして、ケータイとCATVを組み合わせて、個人が地域全体の問題に気づきやすくする編集が光る。あっ! 楽しそう。えっ! どうしよう。へぇ! そうなんだ。といった具合に、住民が自分の位置から、地域全体を見渡せる編集の工夫がある。

 Web2.0時代は、個人の情報の受発信を簡単にしたけれど、個人が、このカオスとも思えるトラフィックを上手に整理するのはとても難しい。だから、ほうっておくと人々は自分の関心の世界に閉じてしまう。メディアをうまく組み合わせて、ケータイな個人と、テレビな全体の間を上手に行き来できるプロの編集技術が地域の気づきを提供する。「ちたまる」はそれを証明したサイトだ。

 人は気づきさえすれば行動を起こす。でも、過去を振り返ると僕は悲しい。気づいて、Web1.0で知って、行動を起こした住民がどれだけ苦労をしたことだろうか。地域の問題を知って、まちづくりに取り組んだ多くの住民が、空しい思いをして去っていったことを僕は知っている。行政が動かないのだ。

 行政の中にいた僕でさえ、インターネット一つを行政の中に取り込むだけで、役所を何度辞めようと思ったことか。身体も壊すし、ほんとうに死ぬような思いをした※1。行政は簡単に動かない。せっかく、がんばる住民が現れても、結局、力尽きてしまう。自治を知らない人は、だから行政はダメなんだ! と話をまるめてポイしちゃうかもしれないけれど、行政が動かないのは、日本の自治のシステムが機能不全を起こしていることが原因の一つだ。

 そんな苦労談を第3回の研究会では、埼玉県志木市役所の原田隆一さんが語ってくれた。原田さんは、前市長の穂坂邦夫さんと一緒に、死ぬ気になって自治体改革に取り組んだ人だ。僕も行政の中で奮闘していた頃に強く感じていたけれど、住民は、行政に物申して社会を変えようとする。でも、現在の首長と議会の2元代表の自治システムの中で、住民意見の反映は、行政じゃなくて議会の役割として位置づけられている。行政が、地方議会の機能不全を背負い込んでいるような今の状態を放置すれば、日本のソーシャル・キャピタルは完全に失われてしまうだろう。

Web 2.0時代にやるべき課題とは

 この研究会での熱のこもった議論と、それから、研究会だけでは足りないので事務局のみなさんとも場外で議論をしたのだけれど、誰もがインターネットに参加できるWeb2.0時代に地域がやるべき課題が随分とはっきりしてきたと思う。その課題は概ね次の4点に絞られるだろう※2

(1)がんばる人と住民とのコミュニケーション機会を増やすこと
(2)がんばる人と住民との関係を長く続かせて信頼と成果を積み重ねる仕掛けをつくること
(3)ケータイのような個人のメディアとテレビのような全体のメディアをつなぐ編集をWeb2.0の技術の上で実行すること
(4)住民ががんばれば実る自治のシステムへと地方自治の制度を改善すること

 この研究会は、2007年3月2日の第4回で最終回を迎えるのだけれど、僕は、総務省がこうした研究会を開いてくれたことをとてもうれしく思っている。なぜなら住民も、職員も、市長も、議員も、地域社会を支える人々はみんな、一人のがんばる人とそれを支える住民が、地域社会を大きく変えてゆくことを知っている。だから、地域の人々は、みんな、下からの自治のシステムを創りたいと思っていた。

 でも、日本という国は、これまでは上からの、中央からの行政と、その効率化にまい進してきた。だから非効率を招く住民参加をできるだけ避けてきた。そんな国が、今、下からの自治のシステムをWeb2.0で創りあげようとしている。

 研究会の報告書がかたちになって、国全体の政策に反映されて、それを実行するんだという方針が出たならば、がんばる人が報われるソーシャル・キャピタルいっぱいのWeb2.0時代の新しいニッポンが誕生するだろう。みなさんも、是非、その行方を見守っていただきたい。

【注】
※1 神奈川県大和市へのインターネット導入の苦労談は、拙著「インターネットで自治体改革」イマジン出版、2006年12月、にまとめてあります。出版社の予想に反して、よく売れているようで、アマゾンでは、頻繁に在庫切れになってしまいます。マーケットプレイスではびっくりするような価格が付いていますが、でも多分、ちょっと待っていれば、定価で購入可能になると思います(笑)。【本文に戻る】
※2 4つの課題の解決事例として、(1)は小樽のまちづくり、(2)は「街のコンシェルジェ」、(3)は「ちたまる」が対応すると思います。こういう試みが全国に広がるといいですね。(4)は僕たちががんばる人になって、みなさんと議論しながら制度のあり方を考えなければなりません。【本文に戻る】