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 「パロ・アルトで駐車スペースが見つからない」。

 最近よく耳にするのが、こんなコメントだ。スタンフォード大学のお膝元のパロ・アルト市はシリコンバレーの中でも洗練されていて、ダウンタウンにはしゃれたレストランがたくさんある。そこへ食事に行きたいのだが、路上の駐車スペースが空いていないので、グルグルと回るだけで何10分もの時間がむだになってしまう。

「今はプリ・バブルである」

 シリコンバレー人は、1990年代後半のテクノロジー・バブルの再来を今、肌に感じている。2000年のバブル崩壊後は、びっくりするほどハイウエイがすいて、パロ・アルトのレストランの予約が簡単に入り、スムーズに駐車もできた。ところが、2年ほど前からジワジワと景気が戻り、どうもまた周辺が混み合ってきたのである。

 「今はプリ・バブルである」というのが、多くの専門家の共通した意見のようだ。その証拠として言及されるのが、たとえば次のような傾向である。

1)ベンチャーキャピタルの投資額が、2001年のレベルにまで持ち直している。
2)ベンチャーキャピタルが投資する新興企業の企業価値評価がここ数年ずっと上昇し続けている。
3)シリコンバレーの地価や住宅費は、住宅バブルのしぼみで下降している他の地域ほどの落ち込みを見せていない。
4)シリコンバレーのサラリーは、全米平均より9%も高い上昇率で増えている。
5)シリコンバレーでのオフィス建設費は、全米平均よりずっと高い。

 前回のバブルと異なるのは、シリコンバレーという土地の性格がより明確にかたち作られてきたという部分である。前回は、シリコンバレーの金脈を目当てにしたあらゆる人々がここへ寄って来たというイメージがあった。マーケティングや広告関係者の派手な雰囲気があたりに蔓延し、テクノロジー主導の地味な土地柄が変わってしまうのではないかと思われたほどだ。

 ところが、バブル崩壊でそうした雰囲気が一掃されたあと、ここに再構築されているのはまさにテクノロジー主導の社会文化。それは、インターネットを含め、テクノロジー業界自体が強靭な技術力がないと生き延びていけないフェーズに入ったことも関係している。

前回と違う「バブルとの正しいつきあい方」

 面白いのは、前回とは違ったバブルとのつき合い方が必要だと説く人々が出てきたことである。彼らのアドバイスをいくつか挙げてみよう。

1)オプションよりも現金を取れ。新興企業に入社するなら、その会社がIPOを果たした後のリターンを皮算用して長居するよりは、交渉していい給料と厚生手当をもらう方が確実。
2)新興企業の主導権をベンチャー・キャピタリストに明け渡すな。Web2.0的ビジネスならば、自分たちだけでやっていける。成功した暁には売却するのが最良のエグジット。
3)新興企業は、有機的に育てていくべし。コンピュータも通信も安価になった今、少額の資金で生き延びることができる。急いで人を雇ったり急速に拡張したりせず、少しずつ可能性を試す方が得策。
4)テクノロジー業界のすごいビジネス・チャンスは、テクノロジー・ファンの外側にある。この世の中には、ブラウザーの使い方すら知らない人がまだたくさんいる。

 テクノロジーも経済も、そして成功の常識もどんどん変わる。そこのところが、ここはやはりシリコンバレーなのである。