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 先週は、シリコンバレーを覆い始めた新たなバブルの空気について伝えたが、前回のバブルを果敢にも乗り越えたいくつのインターネット企業の様子が、どうにも不調そうである。たとえばイーベイ、たとえばヤフー。先行きの不透明感で言えば、アマゾンなどを加えてもいいかもしれない。彼らのビジネスが崩壊しようとしているわけでないが、インターネット広告という、グーグルが打ち立てた強力なビジネス・モデルの前でちょっとくすんで見えるのである。彼らのイマイチな業績も、ここ最近よく報道されている。

ヤフー、イーベイ、アマゾン、バブル崩壊は乗り越えたものの・・・

 イメージで言えば、グーグルがインターネットのインフラ配管工として、どんどん領土を広げてパイプを敷設し、その横に広告という収入ツールも併設してしまったのに対し、ヤフーは大きなデパートや劇場を構えて身動きがとれなくなった上に、小さな人たちに儲けの機会を与えるうまい広告手法開発に乗り遅れた。ユーザーからのトラストもブランド力もあるが、早くそのデパートや劇場を新装開店しないとマズイ感じだ。

 イーベイは、これはもう出店数がある境界を超えたところで新鮮味を失ったというのが正しいだろう。最初のうちは、ユニークな出店者が世界中から集まってくる宝箱のような空間だったが、今やゴミだらけ。これでは現実世界と少しも変わらないではないか。ここにうまく歯止めがかけられないのは、この手のP2Pビジネスの限界かもしれない。ペイパルはまだしも、スカイプを買収したその後、どこへ向かうのかもよく見えない。

 アマゾンはインターネットの流通業者として、ため息が出るほどよく働く会社。

 ユーザーにこんなにサービスしてしまっていいのだろうかと、不安にすらなるほどの働きぶりだ。私はアマゾンの投資家でもないので、無料配送サービスなどをありがたく享受していればいいのだが、出血サービス過剰でこの会社がなくなってしまったらどうしようと、想像するだけで泣きそうになる。

 考えてみれば、インターネット企業にはそれぞれのビジネス・モデルだけでなく、特定のキャラクター(人格)があるのは面白い。キャラクターで今、最も損をしているのはイーベイだろう。まるでどんどん芸者の数ばかり増やした、欲深い置屋のようである。ほんの数年前の、あの人気沸騰はどうしたのか。潮がさーっと引くような変化は、インターネットの恐ろしさそのものだ。

 グーグルは、一見そういった暑苦しいキャラクターを消し去った科学的、エンジニアリング的なアプローチで、新たなキャラクターを作ったという感じ。人の手を介さない全自動化方式で便利なツールを差し出して見せ、「インターネットとはこういうもの」という原理をわからせてくれた。

「考える」行為の6段階にインターネットを当てはめてみる

 だが、この全自動的アプローチがそのうち限界に来るのではないだろうかという気もする。ユーザーは常に新しいものを求めているし、今やインターネットに対する基本的な神経回路を作り上げてしまったユーザーたちは、もっとキャラクターやバリューや「ていねい感」のようなクォリティーを欲することになるのではないかと思うのだ。
おりしも、人工知能の父マービン・ミンスキーが昨年末に出した本『The Emotion Machine (感情のマシーン)』をパラパラとめくっていたら、人間の「考える」という行いは次の6段階で成り立っていると書かれているのを見つけた: 

 1.本能的な反応
 2.学習的反応
 3.慎重な思考
 4.思索的思考
 5.自省的思考
 6.自己認識的思索

 後になるほど高等になり、価値や理想を組み立てることができるという。いやはや、インターネットの神経回路はまだ1か2の段階といったところだろう。

 だが、世界は動き、インターネットも進化している。インターネット広告界でも、グーグルの方法論に対抗する会社が出てきた。半分はグーグルと同様自動化されているが、広告主が出稿先をよりうまくコントロールできる技術を開発したクィゴという新興企業に、大手のメディア会社は注目しているという。

 あるいは、動画の行く手も興味深い。今はやたらと人気のクリップを次から次へと見て喜んでいる状態だが、そのうち野放しになっている動画鑑賞経験が再編成されるのではないか。人気という物差しだけでない別の方法で、求めるものが見つけられるような。そうなると、ナマの人間相手の方法論を熟知したハリウッドと親和性のあるヤフーが巻き返すかもしれない。また、先頃マイクロソフトが医療情報サイトを買収したが、これも完全な自動化やユーザー・ジェネレイティッドなコンテンツだけでは心もとない分野だ。

 インターネットの神経とわれわれの神経。めくるめく変化を遂げていくこの関係が何よりも面白い。