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 私が運営している個人サイトの掲示板にこんな投稿があった。いわく「トップページの色が変わっていて驚いた。季節のイメージに合わせての模様替えだと思う」。そして、最後はこう結ばれていた。「突然変えるのはいかがなものか」。

 え、えええ? 突然変えちゃダメなの?

 いや、誤解しないでいただきたい。サイトの内容を変えたわけではない。トップページのデザインはほぼそのままに、単に色合いを変えただけなのだ。色合いを変えるだけなのに、いちいち事前に告知する必要があるだろうか。「来週の火曜日から黄色系のトップページになりま~す」無論、そんな風に運営しているサイトもあるかもしれないが、わざわざ告知するほどのことでもなかろう。

 思うに先に紹介した投稿の場合「いかがなものか」を本来の意味とは違うニュアンスで使ったのであろう。そうであってほしい。いや、そうであってくれえ。サイトのデザインをちょっといじったくらいで、なにもそこまで言わなくても……。

 「いかがなものか」は、若手エッセイストがよく使うフレーズ(小田島隆や故ナンシー関あたりか)だが、最近ではそれを真似たと思しき素人がWeb日記などで盛んに使うようになった。もっとも「いかがなものか」というフレーズの味わい深いニュアンスを世に出したのは劇作家の宮沢章夫のエッセイではないかと思うが、いかがだろうか。

 そう、ここは「いかがなものか」ではいけない。「劇作家の宮沢章夫のエッセイではないかと思うだが、いかがなものか」って、それじゃ宮沢氏に抗議してるみたいだ。宮沢氏に文句言ってどうする。

 「いかがだろうか」と「いかがなものか」は似て非なるものである。一般に「いかがなものか」という言い回しは、「これってあんまり良くないんじゃないの?」という否定的な意味合いが込められたニュアンスで使われる。一方、「いかがだろうか」は「私はこう考えるが貴方はどうですか?」といったニュアンス。

 インターネットの掲示板は、コミュニケーションの手段のひとつとしてすっかり定着したが、自分の言いたいことを不特定多数の人間にズバリと伝えられる投稿を書くのは至難の業だ。お互い同じ言語を使って交流しているつもりが、実際は地域や年代、国語力の差などによって微妙にズレが生じている。そのため、無用な誤解、トラブルが絶えなかったりする。難しい。

 以前なら図書館に行って調べていたこと(しかも調べてもわからなかったりする)を掲示板で質問をすると親切な誰かが答えを出してくれるとか、普通に生活していたら知り合うはずもない遠方の人々と気軽に世間ばなしをしたりとか、掲示板がインターネットのおおいなる魅力のひとつであるのは間違いないのだが、同じ日本語を使う者同士と思いこみ、互いの言語の微妙なズレに気付かずに利用していると、時に痛い目にあうから要注意である。

 といっても、普段からズレっぱなしの私が、こんな風に偉そうに書くのはいかがなものか。