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 初めてウォークマンを買った時の嬉しさをいまだに覚えている。
 いつでもどこでも音楽が聴ける快適さ。そう、音楽が持ち運べるようになっ
たのだ。

 あの不愉快な朝の満員電車に乗っている時も、イヤホンからはお気に入りの
アーティストの歌が流れている。車窓を流れる風景がまるで映画のように見えた。
 そして、CDウォークマンも発売と同時に迷わず購入。今から思えばドカベン
みたいなごつい箱だったけれど、当時はそのコンパクトさにビックリしたものだ。
 しかし、いつのまにか私はウォークマンを使わなくなっていた。
 なぜか。
 とにかくしんどいのである。聴いているうちに耳がじんじん痛んでくるのだ。
「音 を楽しむ」と書いて「音楽」なわけだが、音で苦しんでどうする。ちっ
とも音楽じゃないじゃん。

 さて、20代後半の頃のこと。友人とエアロスミスのライブを観にいった翌朝、
ふと気づくと耳鳴りがする。
 前夜の大音量のライブの余韻であろうか。音が良く聞こえないような、かえ
ってキンキン響くような、妙な感覚。
 そのうち治るに違いないと勝手に判断し、そのまま数日を過ごしてしまった
のだが、どうもおかしい。ちっとも良くならない。
 会社の昼休みを利用して近所の耳鼻科に行ったところ、「突発性難聴」と診
断されてしまった。もっと設備の整った病院で精密検査をしろと言う。
 そこで、紹介された病院でイヤホンのようなモノを耳に入れて検査すること
になったのだが、医師がしきりと首をひねっている。
 医者に首をひねられるというのはかなり堪える。なんなんだ。どうなってし
まったのだ私の耳は。
 首をひねりながら医師がおもむろに言った。
「耳の穴が…耳の穴が小さいですね」
 え、ええっ。穴が小さいって? 耳の穴ごときに大小があるのか?
 つまり、私の耳の穴は平均より小さく、検査に使うイヤホンが入らなかった
というのである。
 そうか、そうだったのか。
 ウォークマンを聴いていると耳が痛くなったのは、私の穴が小さいからに違
いない。
 「ケツの穴の小さい奴」という少々品のない言い回しがあるが、なんと私は
「耳の穴の小さい奴」だったのである。ケツの穴に匹敵する、いや、それをも
凌駕する情けなさといえよう。ちっちぇー。

 耳の穴の小さい奴だということが判明して以来、イヤホンとは縁のない日々
を送っていたわけだが、街で小さなiPodをぶら下げて歩いている人を見かけた
り、Appleが国内でもiTunes Music Storeをオープンしたというニュースを聞
いたりするうちに、再び音楽を持ち運べる生活に戻りたいという欲求がむくむ
くと湧いてきたのである。
 しかし、そうはいっても耳が痛いのはやっぱりイヤだ。でも、iPod欲しい。
 こんな時、インターネットというのはベンリなものである。
 「耳の穴が小さい」というキーワードでサーチしたところ、SONYの
MDR-EX51LPというイヤホンがヒットした。
 これは「やわらかシリコンイヤーピースが耳穴にフィットする密閉インナー
イヤーレシーバー」なるモノで、S・M・L3サイズのイヤーピースが付属してい
るという。
 というわけで、iPod shuffle+耳穴にフィットするイヤホンという組み合わ
せで晴れて音楽を持ち運べる生活に……と思ったら、なんとiPod shuffleは
Mac OS X対応なのだった。いまだにOS 9にしがみついている私のような者は
iPodは使えないのだという。なんてこったい。
 やはり新しいMacを買うしかないんだろうか。お弁当箱みたいなデザインが
可愛いMac miniにしようか、いやいや、iBookも捨てがたい。でも、夏休み明
け、ちょうどお財布が軽くなっている時期。うーん、買おうか買うまいか。
 …と、かようにケツの穴、もとい、耳の穴の小さな私は、今日もうだうだと
迷っているのであった。ああ、どうしよう。

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