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 ウチの息子は現在小学5年生。小学校も高学年になると下校時間が遅くなる
上、やれ野球だのスイミングだの友達の家でゲームで勝負だのと、いったん遊
びに出かけるとなかなか帰ってこないのである。

 交通事故に遭ってやしないか、変質者に捕まってたらどうしよう、もしや悪
い中学生にカツアゲされてたりしないかしらん……などなど、家で待つ親の心
配の種は尽きない。特に我が家の近くはワイルドな運転をする車が多いため、
交通事故は本当に心配だ。
 信号無視、居眠り運転、歩行者の飛び出しなど、交通事故にはさまざまな原
因があるのだろうが、つまりは人々に自由に運転させているから事故が起こる
のではなかろうか。…と、免許を持っていない私は考えたりする。
 そりゃもちろん運転免許を取得するには教習所に通って試験を受けなければ
ならないわけだけれど、人間、疲れている時はふと眠気に襲われることもある
だろう。八兵衛じゃなくたってウッカリすることもあろう。もし、これが八兵
衛なら「ありゃあ」と言って頭をかけば済むし、せいぜい黄門様に「これこれ
八兵衛」などとたしなめられるだけだが、ドライバーのウッカリはそうはいか
ない。人命にかかわる。
 いくら教習所で「運転する時は細心の注意をすること」とか「眠い時は車を
運転してはいけない」とか厳しく教えたとしても、「ふと」や「ウッカリ」ま
ではどうにもならないような気がするのである。
 そこで提案したいのが、全ての道路にレールをつけること。

レールの上には車が一定の間隔で流れており、この車はコンピューターで制御
されている。車に乗りたい時は停留所で待てば良い。イメージとしては、東京
ディズニーランドの「ホーンテッドマンション」の乗り物みたいな感じだ。
 車は一定の間隔をもって流れているのだから、追突事故なんか起こりようが
ない。渋滞や信号無視という概念もなくなる。
 「それじゃ単なる電車じゃん」と言われるかもしれないが、電車と違ってこ
ちらは個室だ。カノジョと二人きりでドライブすることもできるし、家族団ら
んも楽しめる。もちろんコンピューター制御だから運転手は要らない。車に乗
って疲れて寝ようがお弁当食べようがイチャイチャしようが大丈夫。

 先日、股関節異常で手術をしなければならない私の母親が、最近体調が思わ
しくないので病院に行ったところ、脳梗塞と診断されてそのまま入院してしま
った。幸い脳梗塞は非常に軽くすぐに退院できたのだが、股関節が悪くない方
の足に少し麻痺が残った。股関節は痛いわ、反対側の足は動かないわで、歩く
のが大変難儀らしい。
 母は「入院してから、このごろ本当に足が動かなくなってしまった。でも、
車に乗れて良かった。車に乗れなかったらどんなに不便だったか」と繰り返し
言う。30代で免許を取って以来、我が母はいまだ現役ドライバーなのである。
 しかし、母だっていつ運転できなくなるかわからない。そうなったら彼女の
行動範囲は著しく制限されてしまうだろう。
 だからこそ、全国津々浦々の道路を流れるホーンテッドマンションの乗り物
みたいな車の実現が待たれるのだ。道路さえあれば、家の前からスーパーマー
ケットにでも映画館にでも公園にでも気軽に行けるようになる。

 さて、技術的なことや金銭的なことを抜きにして、このアイデアの実現を阻
むと思われるのは、カーマニアの存在である。
 休みの日になればマイカーのボディをピカピカに磨き上げ、ほんのちょっと
の擦り傷に戦々恐々とし、さまざまなチューンナップを施し、新車のカタログ
をうっとり眺める。あるいはスピードをこよなく愛する彼らだ。
 もし、日本中の車がすべてホーンテッドマンションになってしまうとなった
ら、彼らが黙っちゃいないだろう。
 無論、免許を持っていない私だって、たとえばF1カーのフォルムの美しさや
世界二輪選手権で疾走するバイクのスピード感の素晴らしさはよくわかる。

でも、やっぱりそれよりも、交通事故がなくなったり、誰もが安全かつ簡単に
日本中を移動できるようになるほうがいい。
 そうだ、カーマニア、スピードマニアの皆さんのためには、マイカーを乗り
回すための“自動車公園”とか、思いっきりスピードが出せる“走行用サーキ
ット”のような施設を各地に設置したらどうだろう。で、全国の道路はホーン
テッドマンションに譲ってもらう、と。

 そんなチンタラした車ばっかりになったら、急いでる時どうするんだ?…っ
て?
 いいじゃないの、ゆっくりいこうよスローライフ日本。物騒なことが多い昨
今、交通安全の心配がなくなるだけでも随分ストレスがなくなると思うよ。