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 掲示板は楽しい。
 犯罪の温床になるとか、子ども達の間でいじめの道具に使われるとか、マイナス面も多々あるが、身近ではなかなかめぐりあう事の出来ない同好の士とマニアックに語らったり、世界中の見知らぬ人々と意見を交換できたり、知らない事や困った事を相談すればアドバイスが貰えたり、気の利いたアスキーアートを見て和んだり……などなど、誠に魅力的なシステムである。

 日経パソコン用語辞典によれば、掲示板とは「ユーザーが自由に文章や図版を書き込み、他のユーザーに公開して意見交換や連絡のやり取りなどができるサービス。インターネット上では、Webサイト上に設けられた電子掲示板のことを指す。」とある。英語だと「Bulletin Board System」、略して「BBS」だ。
 しかし、なぜこのシステムを「電子掲示板」と称したのだろう?
 たとえば、インターネットを利用していないウチの母は、「個人のウェブサイト=壁新聞のようなモノ」とまではわかったようなのだが、掲示板となると今ひとつ仕組みが理解できないらしい。
 何度か質問され、そのたびに説明を試みたのだが、これがなかなかうまく伝わらない。

 母「その掲示板っていうのは、お金はかからないの?」
 私「中には会員制のものもあるけど、ほとんど無料だよ」
 母「それは、誰が書いてもいいの? そこに何を書くの?」
 私「え、何をって…そりゃあ、その掲示板に合った話題についてだよ」
 母「でも、もし、書くことがなかったらどうするの?」
 私「それなら読むだけでいいんじゃない?」
 母「えー、そんなのつまんないじゃない。タダで書いてもいいんなら書かなきゃ損でしょ」
 私「いや、損とか得とかじゃなくてさ…」
 母「よくテレビでブログっていうのを紹介してるけど、あれが掲示板?」
 私「いやいや、ブログっていうのはまた別のモノでー」
 母「ああ、もういいや。難しそうだからまた今度教わるね」

 かくして、今日もまた我が母は掲示板の仕組みを理解することなく、日々暮らしているのだった。

 だが、インターネットやパソコンを使わない母が理解しにくいのも無理はないとも思う。一般に掲示板といったら、「日曜に幼稚園でバザーを開催します」とか「粗大ゴミの収集は12日です」といった地域のお知らせを貼り出すスペースを思い浮かべるはずだ。

 このシチュエーションを電子掲示板に置き換えて考えてみよう。
 誰かが「粗大ゴミの収集は12日です」というスレッド(トピックス)を書き込むとする。
 すると、この告知に対して、また別の誰かが「12日は旅行中なので15日にしてほしい」「ウチは粗大ゴミがたまってるのでもっと早く回収してほしい」などなど、さまざまなメッセージを書き込むだろう。中には、「夫がゴミ捨てに協力してくれません、どうしたらいいでしょう」「粗大ゴミってなんですか?」「粗大の読み方がわかりません」…などのような、スレッドの趣旨からハズれたメッセージも寄せられるかもしれない。

 こうして、意見や批判や感想がにぎやかに乱れ飛び、見当はずれなメッセージからもまた新たな話題に発展していくのが、電子掲示板の醍醐味なわけだが、これが実際の街角の掲示板だったら大変である。

 「粗大ゴミの収集は12日です」という告知のまわりにぎっしり書き込まれるメッセージ。膨大なメッセージに埋もれて、いつ粗大ゴミが回収されるのかわからなくなってしまう。そして、そのうち書く場所がなくなって、道路やら塀やらそこらじゅうにメッセージがあふれかえる……。ね? やっぱり「掲示板」という呼び名はおかしいと思うんだけどなあ。
 しいて言うなら、ペンションとか喫茶店とかで見かける「伝言ノート」あたりが適当じゃなかろうか。「チーズケーキが美味しかったデ~ス」「今度はカレと2人で来ます☆」とか書くようなアレ。
 お店を訪れた人なら誰でも読めて、思い思いのメッセージを書き込むことができる。それは、店主へのメッセージや、こうしてほしいああしてほしいという店への注文でもいいし、他の訪問者に対するひとこともアリだ。
 「お店=ウェブサイト、伝言ノート=電子掲示板」と考えたら、しっくりくる。

 ……あ、そうか。母に「電子掲示板=お店の伝言ノートのようなモノ」って説明すればよかったのか。今度、掲示板について聞かれたらそう教えようっと。