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 2004年10月、次世代の大容量光ディスク規格「HD DVD」と「Blu-ray Disc」に、Microsoftの「Windows Media Video 9」に基づくビデオ圧縮技術の「VC1」が採用された。報道ではよく耳にするVC1だが、Windows Media Video 9との関係はどうなっているのだろうか。最近明らかになったWindows Media Video 9の技術内容を踏まえて、両者の関係を解説しよう。

WMV9を標準化団体に提案してVC1が誕生した

 Microsoftが2003年1月に発表したWindows Media 9シリーズは、プレーヤーソフトの「Windows Media Player」(図1)だけでなく、ビデオ圧縮、オーディオ圧縮、「DRM(Digital Rights Management)」などさまざまな技術を統合した製品群だ。その中で、ビデオ圧縮技術はWindows Media Video 9(以下WMV9)と呼ばれている。WMV9は、1994年12月に発表された「Microsoft MPEG-4 V1」以来、「MPEG-4 V2」「MPEG-4 V3」「Windows Media Video V7」「Windows Media V8」と進化してきたMicrosoftのビデオ圧縮技術の集大成だ。これらは、当初はMPEG-4 Video規格に相当する圧縮方式だったが、Windows Media Video V7で大きく手が加えられ、新しい圧縮方式と呼べるものになった。

 Microsoftは2003年9月、SMPTE(Societyof Motion Picture and Television Engineers、全米映画テレビジョン技術者協会)にWMV9を圧縮技術標準の1つとして申請した。SMPTEは、映画/放送設備のための規格を策定している団体だ。MicrosoftはWMV9の技術的内容を公開することで、標準技術として認知させ、ゆくゆくは映画/放送業界で本格的に採用されることを狙ったものと考えられる。

 SMPTEに提案されたWMV9は、当初「VC9」と呼ばれていた。標準化の過程で呼び方が変更され、現在は「VC1」と呼ばれている。SMPTE標準の中に業務用のデジタルVTRテープの規格があるが、これはD1、D2、D3…と順に番号がついている。ちなみに民生用DVカムコーダーに使われているDV圧縮はD7という番号だ。WMV9のような、コンピューター向けのビデオ圧縮技術にも、VC1、VC2と順次番号が付与されると考えられる。

 MPEGのビデオ圧縮規格と同様、VC1において標準として規定されるのはデコード(再生)の方法のみ。エンコード(圧縮)の方法は規定していない。つまり、エンコードの方法は自由で、Microsoft自身が持つエンコードのノウハウは隠されたままである。

 ただし、デコード方式が公開されたことで、特許への抵触を別とすれば、他社でもエンコーダーを開発できるようになった。今後はハードウエアエンコーダーの開発も活発化すると考えられる。WMV9は、H.264と比較するとエンコード時のCPU負荷が小さいが、HD解像度でリアルタイムエンコードしようとすると、やはりハードウエアのエンコーダーが必要になるからだ。

 なお、VC1で規定されるのは、あくまでビデオの圧縮技術の部分だけだ。オーディオの圧縮技術や、システムと呼ばれるビデオとオーディオの多重化技術については今回のSMPTEでの標準化の対象外となっている。つまり、VC1では、音声圧縮にWindows Media Audio 9が使われるとは限らず、VC1とDolby Digitalを組み合わせて、MPEG-2 TS(Transport Stream)に載せて使ったりすることもあるわけだ。実際に、米国のデジタル放送規格を決めている組織ATSC(Advanced Television Systems Committee)は、MPEG-2 TSにVC1を載せた規格(MPEG-2System規格の拡張)の策定を進めている。

 SMPTEでの標準化の過程で、VC1には新たにインターレース映像に特化したエンコード機能が追加された。家庭用テレビを出力デバイスとする場合、インターレース映像への対応が課題となる。このため、インターレース対応機能が追加されたが、従来のPC用のWMV9と異なるため、従来の「Main Profile」に対して「Advanced Profile」と呼んで、区別している(表1)。

 VC1とWMV9の関係だが、標準化されようとしているビデオ圧縮技術VC1に対し、それを実装した製品の1つがWMV9ということになる。

 MicrosoftはVC1に加わった新しいプロファイルへの対応を進めている。図1で紹介したWindowsMedia Player 10をインストールすると、新しいプロファイルがインストールされる。