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 前回はアップルが用意しているHDクオリティのサンプルファイルがすごく貴重だという話をした。DRM(コピープロテクト)一切無しでBBCのMotion GalleryやIMAX向けに作られた鮮明な映像をダウンロードしてApple TVで鑑賞できる。次は毎日放送されているテレビ番組をどうすればApple TVで見ることができるのか。

テレビ番組はどう取込もう

 仕事と遊びに忙殺されている毎日だと、テレビを見ることはほとんどない。スイッチを入れるとほとんどお笑いタレントが画面に飛び出し、絶叫している。世界遺産を巡る旅の番組でさえ、豪華キャストが揃ってクイズに興じ、あまりのくだらなさに即スイッチを切ってしまう。しかし、たまに、本当に真剣に作られた貴重な映像もある。そんな番組は早朝とか、深夜とか、なかなか付き合っていられない時間帯に放送されていることが多い。結局録画デジタイズし、Apple TVに送り込むという運用となる。

 Apple TVはHDクオリティの映像を扱うことができるから、当然ソースはデジタル放送しかないのだが、現在のところ、デジタル放送の番組をApple TVにコピー可能な形でファイルとして取り出すことはできない運用規定になっている。これをクリアする方法はない。残念ながら、これはあきらめるしかない。

 地上アナログ放送なら、さまざまなキャプチャーカードやユニットが売られている。これ経由でソースをApple TVが取り扱えるフォーマットにすればよい。せっかくのApple TVと大画面スクリーンなのにスタンダード品質の映像しか扱えないのは非常に残念だが、これが現実だ。

 あまたあるテレビキャプチャーシステムの中でも、Mac専用に作られたUSBキャプチャーユニット「CaptyTV Universal」(ピクセラ)なら、放送を録画した後のMPEG-2ファイルをiPod向けファイルに変換するソフト「monoCoverter」が付属している。これを使って取りあえず、Apple TVとiPodへの取り込み可能なファイルを作ることができる。

 ただしこれだと、でき上がったファイルは小さな画面のiPod向けになる。H.264フォーマットで320×240ドットという小さな画像。30インチくらいまでのテレビならこれでも何とか鑑賞できるが、大画面ではイライラするくらいのボケ具合になってしまう。是非、早い段階でmonoConverterがApple TVにも最適なファイルを吐き出してくれることを期待することにしよう。

 CaptyTVに付属のソフトとしてMPEG-2ファイルを編集する「Capty MPEG Edit EX」もある。これを使って、不要な部分をカットした上でH.264型式で書き出すこともできる。せっかくバンドルされているソフトなのだから、うまく使いこなそう。書き出すときにはオプションの設定を「ファイルフォーマット:MP4」「ビデオフォーマット:MPEG-2 標準品質」「データレート:4900キロビット/秒」「イメージサイズ:720×480 」「フレームレート:カスタム、24フレーム」という感じでセットしてみよう。

 大きな不満はスピードが極端に遅いということだ。たった30秒のビデオファイルを処理するのに30分もかかる。アプリケーションがIntel CPU向けに最適化されていないということもあり、実用というにはほど遠い。

 もう一つ「QuickTime」で変換するという方法も考えられるが、これは後述するように大きな穴があって使えない。CaptyTVの録画ファイルはMPEG-2フォーマットとなっていて、QuickTimeでは直接読み込めない。そこで、Apple Storeで2400円(本体価格:2286円)で売っている「MPEG-2 再生コンポーネント」を手に入れることになる。

 MPEG-2 再生コンポーネントをインストールしたQuickTimeは難なくMPEG-2ファイルを読み込めるようになり、Apple TVフォーマットで書き出すことができる。

 でき上がったファイルは無事、VHSテープの標準画像程度の画質の映像になってはいる。しかし、音声がくっついていない。QuickTime MPEG-2 再生コンポーネントで読みこんだ音声付きのMPEG-2ファイルから音声を別フォーマットで書き出すことはできない仕様だったのだ。元のファイルがMPEG-2の場合にはQuickTimeソリューションはあえなく撃沈だ。

録画ファイルを連続変換
 
 結局、CaptyTVでキャプチャーしたMPEG-2ファイルをApple TV向けに実用的スピードで変換するためには、サードパーティ製のファイル変換ソフトのお出ましとなる。中でもお勧めなのはVisualHubだ。このソフトはDivX/XviD、AVI、各種MPEGビデオをiPod、PSP、Apple TVなどに変換してくれる。作業終了後は自動的にiTunesへ登録してくれる機能なども組み込まれていて、とても簡単に使える。23.32ドルだが、その価値十分にありだ。約30秒の画像は2パス方式で、1分20秒で変換終了となった。(写真1)

写真1:MPEG-2、DivX/XviD、AVIなどさまざまなビデオフォーマットをApple TV向けにワンクリックで変換してくれるVisualHub

 画面を見てお分かりいただけるように、複数のファイルを一度に登録しておき、一気に変換させることもできる。また、iTunesに自動登録したあと、コンピューターの電源を切るということもできるから、深夜寝ている間に作業をさせておくということもできる。

 このソフトの元になった、「iSquint」は機能限定で無料配布されているが、Apple TV変換が既定値として用意されていない、より高精度の画像を得るための2パスエンコーディングに対応していないなど、不満も残る。あまり悩まなくてもワンクリックで変換してくれる点でVisualHubがお薦めだと思う。

 さて、こうしてさまざまなコンテンツがApple TVで視聴可能になった。あとは、これをいちいち変換、登録などとしなくても自動で処理できるようプログラムを組んでみよう。完成すれば朝6時台のニュースを朝食時に見るということもできるだろう。

 しかし、こんな苦労をしなければならないのも、日本のデジタル配信の後進性のせいだ。米国ではCNN、ABC、CBSなどほとんどの放送局がニュースや過去の歴史的放送をiTunes Storeで有料配信している。画質は悪いが速報性が必要なものはPodcastingで無料配信も同時に行っている。視聴者のスタイルに合った映像を、視聴者が選択して入手するというデジタル配信が一般化し始めている。

 NHKアーカイブズには私たちの視聴料をつぎ込んで作った貴重な映像が60万本近く保存されている。しかし、これらの貴重な映像のほとんどは死蔵されたままだ。こんな貴重な映像がクリック一つで届くデジタルパラダイスが早く訪れてくれないものかと、関係者の意識変革を祈るばかりだ。