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 「社員も経営マインドを持つべきだ」「グローバルな経営マインドを磨こう」「おまえには経営マインドが足りない」。ビジネスのいろいろな場面で使われる「経営マインド」という言葉ですが、多くの場合に共通しているのが、「日本のビジネスパーソンには経営マインドが欠けている」という文脈で使われることです。

 なぜ、日本では経営マインドが育ちにくいのでしょうか。私は環境のせいだと思います。まず、ホワイトカラーの数が多すぎるために、仕事が細分化されています。海外の競争の激しい企業では、社内のポスト争いで敗れた人はどんどん会社を去り、再起をかけて新天地へ向かいます。しかし、日本は終身雇用の国で、退職率が非常に低いです。ポストがなくても、専門部長や専門課長という、ほとんど何の権限も与えられない肩書きで残ったり、あるいは子会社に出向になったりしながら、1つの会社に居続けるわけです。その結果ホワイトカラーが多くなりすぎ、それぞれに仕事を与えるために、1人1人の守備範囲を非常に細かく分割しなければならないという弊害が生まれています。

 さらに、日本のホワイトカラーに関しては、生産性が低いと指摘されることも少なくありません。そこでたびたびやり玉に挙がるのが、無駄な会議の多さです。確かに、フェース・トゥ・フェースの会議が必要以上に頻繁に行われているという印象は私も強く受けます。会議のための会議、そのまた会議のための会議、などといったものは、本当に無駄に見えます。

 その原因も、やはりホワイトカラーが多すぎることにあります。役割が細分化されているため、意志決定をするのに、いちいち大勢の人間が集まって会議を開き、複雑な調整をしなければなりません。これでは、スピード経営の実現も難しいはずです。

少数精鋭だから鍛えられる

 それに対して、少数精鋭で、それぞれが広い守備範囲を受け持っている会社では、会議の数はずっと少なくなります。大勢が一度に顔をつきあわせなくても、メールや電話で個別に意見交換するだけで事足りる場合が多いからです。サッカーに似ていると思います。優れたチームは、選手の1人1人が試合全体の流れを読みながら、大きな視点で自分がすべきプレーを判断します。パスがポンポンとよどみなくにつながり、スピーディーに敵ゴールまで迫る。監督の指示を待つだけでなく、自分自身が監督と同じように考えを巡らすことで、状況に応じた適切なプレーができるわけです。

 経営マインドを持つことの意義は、まさにここにあります。この事業を3年先、5年先、あるいは10年先まで、どういう戦略で組み立てていくのか。そのためには、何にどれだけの投資をすべきなのか。社内にはどういう人材がそろっていて、新しくリクルートしなければならないのはどんな人材か。顧客のニーズは?マーケットの動きは?コンペティションは?技術動向は?

 もし、こうしたことのすべてを社員1人1人が考えながら業務に当たるなら、監督の視点を持ったサッカー選手と同様、状況に応じた意志決定を迅速に、そしてより正確にこなせるはずです。また、上司の指示通りに動く場合でも、なぜ自分がそうしなければならないのか、それが会社全体の中でどういう意味を持つのか、理解した上で自分なりの創意工夫ができるわけです。

 とはいえ、日本の企業が急に少数精鋭の体制を取るというのも難しいでしょう。従来の環境の中で経営マインドを持つには、どうすべきなのか。次回考えたいと思います。

(構成 曽根武仁=百年堂)