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 春である。
 我が家の豚児もこの4月からいよいよ中学生。受験勉強から開放され、まだ宿題が出ていないのをいいことに、毎日浮かれている。息子の頭の中も春爛漫。あー、こりゃこりゃ。
 息子が浮かれる一方、母は憂鬱なのである。
 授業が始まると同時に弁当作りもスタートするのだ。
 豚児の通った保育園と小学校は給食があったし、私が学生だった頃はいつも母に弁当を作ってもらっていたので、このたび生まれて初めて毎日弁当を作ることになる。

 困った。ああ、受験前に学校情報を調べたさ。学校にはちゃんと食堂があるんだよ。でも、「昼食は弁当が好ましい」というプリントが学校からわざわざ配布されたということは、やはりこれは毎日作らなくちゃいけないんじゃなかろうか。むぅ。

 私は料理が苦手である。そして私は朝に弱い。
 じゃあ、昼は強いかというと、そういうわけでもなくて、昼は昼寝だ。夜はテレビを見て寝る。なんだ、ほとんど寝てるじゃん。ぐー。

 無論、豚児が小学生の頃に弁当をまったく作らなかったわけではない。
 遠足や運動会、少年野球の試合の日などは、眠い目をこすりながら慣れぬ手つきで弁当をこしらえたものだ。だが、その弁当といえば、豚児のリクエストでいつも同じもの。弁当箱にぎっしり詰めた白米の上に豚の生姜焼きをドーンとのせただけの生姜焼き弁当。ニンジンをお花の形にカットするとか、ウィンナーをタコさんの形にするとか、彩りを考えるとか、そういうの一切なし。ただひたすら肉と飯。
 それでいいのか、息子よ。何度も本人に確認をとったが、それでいいらしい。そうか、そうなのか。

 そういえば、料理研究家のケンタロウ氏が子どもの頃の想い出として、ケンタロウ氏の母堂でやはり料理研究家の小林カツ代氏がいつも彩り豊かな弁当を作ってくれたが、本当は茶色い弁当の方が良かった……と語っていたらしい。茶色い弁当というのは、たぶん醤油のしみた海苔とか炒めた肉とか煮物のようなおかずだけが入った弁当のことだろう。
 ウチの豚児もまさにそれ。キュウリだのトマトだのニンジンだのが弁当に入っていると迷惑だと言う。男児の弁当箱にプチトマトはいらない、ということか。

 まあ、作るのはカンタンだし、豚児本人も喜んでいたので、毎回悩むことなく生姜焼き弁当を持たせていたわけだが、育ち盛りの中学生、毎日、肉と飯だけじゃ栄養が偏りすぎるだろう。豚児の栄養管理の頼みの綱だった学校給食もなくなってしまったわけだし。
 ああ、憂鬱だ。
 しかし、そうそうどんよりしていられない。もうすぐ弁当の日々が始まってしまうのである。なんとかせねば。
 よし、どうせ毎日作らなければならないのなら、楽しみながら作ろうじゃないか。

 そこで思いついたのが、今どき流行のキャラ弁だ。漫画やアニメ、あるいはタレントや歴史上の人物をお弁当で表現するというアレ。
 豚児が幼い頃は、アンパンマンとかピカチューといった幼児に人気のキャラクターのお弁当を作るママさんが結構いたような覚えがあるが、いや、近頃のキャラ弁はすごいぞ。料理というよりこれはもうアートだ。

 とにかく、まずはこのブログを一度ご覧いただきたい。
 その名も「★彡次男坊にゃ虐待弁当&ダンナは倦怠期弁当=逆切れギャク弁!★彡」

 「ギャク弁」というのは、「虐待弁当」あるいは「逆ギレ弁当」の略。作者の別サイトによると、「毎日お弁当を作っても、息子は『美味しかった』も「ありがとう』も、言いやしない。ならば、親の愛情をいやでもわからせてやろうじゃないの!と始めたキャラクター弁当。このお弁当をクラスで食べるのは、高校生にとって虐待だぁ!とブログで火が点いた!『虐待弁当』『逆ギレ弁当』と呼ばれたこの弁当を、書籍化にあたり『ギャク弁』と命名!」ということらしい。
 だって、お弁当に紫の髪のアラレちゃんだよ。黒柳徹子だよ。草野仁だよ。すげー。ありえねー。食うのか、草野仁を!
 この他にもたくさんの腕自慢のママさんたちが見事なキャラ弁を披露してくれているので、興味を持たれた向きはコチラあたりから探していただきたい。

 さて、「すげー」とか「ありえねー」とか言ってる場合ではなかった。
 これを私が作るんだぞ。……いや、無理だ。ごめんなさい。無理です。
 私も徹子弁当で息子に愛をこめて嫌がらせしてやりたいところだが、いかんせん技術がない。もうちょっと、こう、シンプルなキャラじゃないと駄目だ。
 そうだなあ、たとえば「オバケのQ太郎」とかどうよ。大きな目と口、そして毛が三本。これなら出来そうだ。
 とはいえ、オバQは息子の世代には今ひとつ認知度が低いような気がする。他にこんな感じのキャラクタはいないものか。

 ……と、探していたところ、いたいた、いましたよ、オバQっぽい奴。
 「週刊ジャンプ」に連載中の「銀魂」という漫画に出てくるエリザベスというキャラクターだ。そうそう、これこれ、こういうのを探してたんだよ。ちなみにこいつは「正体不明の宇宙生物」で「身長180cm体重123kg」らしい。意外とでかいぞ。あと、「ナースの内野さんと交際している」という設定だそうだ。なんだそりゃ? 誰だ、ナースの内野さん。っていうか、一度くらい「銀魂」を読めばいいじゃないか、私。
 というわけで、記念すべき最初のキャラ弁は、謎のキャラクタ・エリザベスに決定。
 さて、見事エリザベスになるのか、あるいはうっかりオバQになってしまうのか、はたまたいつもの茶色い生姜焼き弁当になっちゃうのか……。その結末は神のみぞ知る。あーこりゃこりゃ。