前回紹介した音声認識の原稿を書いていて、ふと思った。入力方法として手書きもあるな、と……。
そういえば、Windows Vistaには、手書き文字を認識するタブレット機能(Tablet PC)が標準で搭載されていたはずである。確認してみると、スタートメニューの「すべてのプログラム」-「アクセサリ」に、しっかりと「Tablet PC」の項目があった。つまり、ペン入力を感知する入力機器であるタブレットをVistaパソコンにつなげれば、入力にペンが使えるということである。
早速、息子のお絵描き用タブレットを拝借して、Vistaパソコンに接続してみる。あっけないほど簡単に認識されてしまった。前回紹介したサウンドボードとはえらい違いである。ちなみに製品はワコム「Intuos3 PTZ-630」。念のため、Intuos3 PTZ-630のVista用のドライバーソフトもダウンロードし、インストールしておいた。
先に言っておくが、私は字が汚い。自分で書いたはずのメモが読めない人は多いと思う。私もその一人である。しかも“重症”だ。
その字をきちんと認識したら、「えらいっ」と褒めてあげようと思い、Tablet PC入力パネルを起動した。
入力パネルは3種類のモードを持っている。罫線が引かれた便せんに文字を書くのと同じように連続して自由に文字を書ける「手書きパッド」、一文字ごとに区切りがあり、一文字ずつ入力していく「文字パッド」、ソフトキーボードが表示されて、キーを選択する「スクリーンキーボード」だ。この3タイプを自由に切り替えて、タブレットを使ったペン入力が行える。マウスで操作することも可能だが、キーを選択するスクリーンキーボードはともかく、手書きパットと文字パットはマウスで手書きをするにはちょっとつらい。



ワードパッドを立ち上げ、タブレットにペンを近づけると、図4のような小さなパッドが現れた。このパッドをクリックすると、入力パネルが表示される。

入力パネルにまず「あ」と入力してみた。マウスとペンで書き比べてみたが、これはもう圧倒的にペンの方が入力が楽である。すらすらと書いていっても、かなりの速度で追随してくる。認識率は高い。間違った場合も文字の下のアンダーバーをクリックすると、代替候補が表示される。文字の形がだいたい合っていれば、この候補の中に入力したい文字があるはずだ。
手書きだからといって、漢字がきちんと書ける必要はない。自信のない漢字なら、ひらがなで書いてから漢字に変換すればよいのだ。「追随」なんて文字を手書きするのは大変なので、こういう時は、「ついずい」と書いて、文字の下のアンダーラインをクリックする。簡単に「追随」に変換できる。



文字パッドの画面では、文字の種類を「英単語」「数字」「英数字」「すべて」から選ぶことができる。日本語を入力するには「すべて」を選ぶ必要があるが、たとえば、メールアドレスやURLを入力する時には、「すべて」以外の種類を選ぶか、スクリーンキーボードを使ってキーを選択する方が確実だ。
……いろいろと文字を入力してみたのだが、私の悪筆でも何の問題もなく認識されてしまった。ちょっと拍子抜けである。でも、「えらいっ」。
さて、ここまで手書き認識を使ってきての感想だが、文章を入力するのに不自由はない。マウスと同じようなポインティングデバイスとしても使えるので、音声入力よりは編集が楽。ただ、腕は疲れる。
以下、よかった点と悪かった点を挙げてみよう。
●良かった点。
- 片手で操作できる
- 認識率が高い
- 修正が楽
●悪かった点。
- タブレットが場所をとる
- 長い文章を一気に書けない
- キーボードほど速く入力できない
タブレットの本来の目的は絵や図を描くことであり、文字認識はそのおまけといってよいだろう。しかし、使ってみると、意外と実用的だという印象だ。ペンを握って、一文字一文字書いていくという作業には独特の満足感がある。手書き派の人はちょっと注目してみてはどうだろう。紙のように、とは言わないまでも、それに近い感覚は魅力的だ。