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松田 憲幸(まつだ のりゆき)
1965年兵庫県生まれ。89年、大阪府立大学工学部数理工学科卒業。同年、日本IBMに入社。SEとして金融系システム開発などに携わり、93年に独立。システム・コンサルタントを経て、96年8月にソースネクストを創業、現在に至る
(撮影:村田 和聡)

 ウイルス対策ソフトの更新料をゼロにし、シェアを急拡大したソースネクスト。メーカーにとって、「打ち出の小槌」だったはずの毎年の更新料取得を撤廃した理由は何か。それで収支は成り立つのか。同社トップの松田社長に聞いた。

■そもそも、なぜウイルス対策ソフトの更新料をゼロにしようと考えたのですか。

 きっかけは、私の父親からの電話でした。「いきなりウイルスソフトの画面に『使用期限が切れます』と出てきたけど、どうすりゃいいんだ」と聞いてきたのです。まるで“恐怖の手紙”を受け取ったように怯えているんです。更新の手続きがわからないことが、こんなにプレッシャーを与えるものかと考えさせられました。

 当社の社員に聞いたところ、やはり同様の声が家族から届くと言うんです。そうか、更新料の支払いを面倒に感じるユーザーはそんなに大勢いるのか。それなら、更新料を一切取らないことにすればどうだろう。きっと、みんな喜ぶに違いない。そう考えて、商品化計画をスタートさせました。

 だから、発想そのものはとても単純なんです。お客様が喜ぶからやる。あとは、ソフトメーカーとしてどう実現するか、それだけを考えました。

■でも、実際にコストの試算をすると、色々な障害が持ち上がったわけでしょう。

 いや、そうでもないんですよ。試算を重ねるなかで、更新料をゼロにすると、ユーザーだけでなく我々メーカー側にもメリットがあることがわかってきました。例えば、ウイルス対策ソフトに関するお客様の電話は、半分以上が更新料に関する問い合わせです。更新料をなくせば、当然問い合わせもなくなる。こちらのサポートコストも半減するわけです。

 早い話、更新料を取るのは、昔の“集金”と一緒ですからね。お客様も面倒ですが、こっちだって面倒なんです。電気代やガス代みたいに「自動で引き落とし」とはいきません。色々な手間やコストがかかりますから。

■でも、更新料を取れば、その分売上が増えるのは確かでしょう。それに、ワクチンファイルを日々更新する費用もかかるわけだから、それを負担してもらわないと、収支が悪化しませんか。

 その理屈は一見正しいようで、実は大きな間違いです。種明かしをしましょうか。

 例えば、Aさんがウイルス対策ソフトを買ったとします。その1年後、今度はBさんが同じ製品を買いました。この時点で、Aさんは購入後一年経っているので、年間更新料を取られます。メーカーの言い分は「最新ワクチンの更新費用がかかるから、Aさんも負担してください」という論理ですね。

 でも、よく考えてみてください。メーカー側は、新しい購入者であるBさんのために、どのみち最新のワクチンファイルを作らないといけないんです。しかも、その開発費用は、Bさんが買うときにきちんと負担してもらっているわけです。だったら、Bさんのために作った最新のワクチンを、そのままAさんに使ってもらえばいいじゃないですか。何も、一年前に買ったAさんから更新料を徴収する必要はありません。無償でワクチンをダウンロードできるようにしてあげればいいんです。

 そもそも、ワクチンのファイルは、人数分用意する必要はありません。一つのファイルを無数のユーザーに配布できる。みんな、ここを見落としているんです。

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