ヤフーでCEO(最高経営責任者)を務めたテリー・ゼメルがとうとう退場となった。長らく業績がパッとしないヤフーは、昨年末以来、全社規模で組織再編を行い、大幅な人員整理を行ってきた。その仕上げがCEO自身の辞任というわけだ。いや、まだ仕上げではない。ゼメルの後にも部長クラスの社員の辞任が伝えられている。

 思えば6年前、ゼメルが就任する直前のヤフーの株式総会を取材したことがある。当時のCEOはティム・クーグル。ヤフーの6、7番目の社員だった彼は、「大人げない」2人の共同創設者を補うために、創設間もない1995年にCEOの地位に就いたのだったが、2001年のその株主総会は見ているだけでクーグルが針のむしろに座らされているのがよくわかった。同席したヤフーのエグゼクティブらは誰も彼と目を合わせようとせず、総会開始前のクーグルはポツネンとひとりテーブルに座っているのである。クーグルが辞任したのは、確かその直後だ。

 今回、ゼメルも1週間ほど前の株主総会で業績と見合わない高い報酬を責められたらしい。ゼメルはハリウッド映画業界の大物として鳴り物入りでヤフーにやってきた。このインターネット会社を一大エンターテインメント兼メディア会社に育て上げるはずだったが、「iTunes」のようなものが出るでもなし、「YouTube」が出てくるわけでもなし、ましてやSkype創業者の2人がスタートしたインターネットテレビ「Joost」のようなものがここから生まれることもなかった。底力はあるはずなのに、実を結ばない。

 ヤフーの分析がいろいろ行われているが、要は大企業病に陥っていたというのが正しい見方だろう。ビジネス強化のためにスタートアップ企業をいろいろ買収するが、一番いい獲物はすでにグーグルに奪われた後。また焦って買収しても、同じようなことをやっている部署がすでに社内にあったりして、非効率なことこの上ない。広告担当部門も、複数に分かれていたという。あるスタートアップ企業からヤフーに転職した知人は、以前なら一人でやっていたような仕事をここでは3人かかってやっていると驚いていた。

 昨年秋には、ヤフー社内で「ピーナツバター・メモ」という文書が回覧されたが、これはトーストにピーナツバターを薄く伸ばすかのごとく、ビジネスを手広くやることだけを目的にしていていいのかという自問自答だった。

 ゼメルの後、創設者のジェリー・ヤンがCEOに就任するが、かしましいシリコンバレーでは、彼が果たして適任なのかどうかという議論もさかんだ。これまで彼は正当に評価されてこなかったとか、ヤンも今や大人になったという意見、あるいは彼にはビジョンがあるという意見がある一方で、悲観的な見方も多い。複雑な組織を実際に管理した経験がない、決断を先延ばしにする癖がある、もっと若い血を入れた方がいいなど。38歳のヤンを年寄り呼ばわりするとは、さすがシリコンバレーだ。ヤンは暫定CEOとして終わるだろうという予測も出ている。

 ヤフーは現在、事業部をテクノロジー、オーディエンス(ユーザー)、広告の3つに絞って、ぜい肉のそぎ落としにかかっている。そう言えば、ステーブ・ジョブズがアップルに暫定CEOとして舞い戻ったのは1997年のこと。ジョブズはすぐさま事業部を4つに削減したが、その1年後にカラフルなiMacを、4年後にiPod を発売して、堂々と復活を成し遂げた。

 ヤフー立て直しのドラマ、開幕である。