「シリコンバレーのインターナショナル化は、いちだんと加速している」。

 先日、知り合いの弁護士と話をしていて、そう実感した。

 その若い弁護士は、数ヶ月前にシリコンバレーのスタートアップ(新興企業)に就職した。パテントを専門とする人で、その企業が今後開発する技術の特許申請をしたり、あるいは既存のパテントをクリアーしたりといったようなことを任されているらしい。

 彼が務めているスタートアップは、太陽熱を効率的にエネルギーに変換するソーラーパワー・モデュールを超安価なものとして大量生産しようとしている。今20人足らずの社員がいるが、「ひょっとして、普通のアメリカ人は僕くらいかも」と言うのである。

 太陽熱技術は、シリコンバレーを次世代へ移行させる新分野。シリコンを利用するといった技術的な連続性は一応ある。ITから始まってバイオ、環境技術へ、次々と変わっていく新技術の舞台として相変わらずシリコンバレーが選ばれているのもおもしろいのだが、新しければ新しいほど競争の速度はどうも速くなっているらしいのだ。

 このスタートアップも、全米から優秀な頭脳をリクルートするなどという悠長なことをやっておられず、世界中の大学研究所や国立研究所に在籍していた研究員を一本釣りで集めたらしい。その結果、イギリス人、イタリア人、ロシア人、ベルギー人、スウェーデン人など、みごとに外国人、それもヨーロッパ出身者ばかりの集団になった。おそらくかなり特化した技術分野の研究者ばかりで、以前から国際学会などで名前を知り合った仲なのだろう。環境技術開発では先行していたヨーロッパ出身者が多いのも、うなずけることだ。有力なベンチャー・キャピタルもつき、スティルス・モード(極秘体制)で開発を行っている様子である。

 先日訪れた別のスタートアップでは、会議室でミーティングをやっている6、7人の社員が全部インド人だった。創設者兼CEO(最高経営責任者)もインド系なので、「インド人の社員しか採らないのですか?」とつい尋ねてしまったくらいだ。「そんなことはないですよ」というのがCEO の答だったが、実際、インド系社員の人口比は平均値よりかなり高そうである。

 前回のITバブルの頃、シリコンバレーの企業についてはこんな話がまことしやかに伝えられていた。「創設するのは中国人やインド人のエンジニアであっても、スタートアップがいったん軌道に乗ると、CEOはビジネスを熟知したアメリカ人に取って替わられる。販売やマーケティングもアメリカ人で、広報担当者などはやっぱり白人でないと……」。こういう時代はすっかり終わったようである。今のスタートアップはともかく技術を特化させるための、機動力最優先の戦闘ムードなのだ。そのために都合がよく、効率的なチーム編成をする。

 最近のシリコンバレーは、住まう場所というよりは、空港のようなイメージがある。世界中からいろいろな人がやって来て、ここに集まり、地元の金やら機会やらというインフラを利用して、ビジネスを興す。その編成、再編成、解散の速度が、めまぐるしく速い。いずれにしても、シリコンバレーのユニークさが、ますますその強度を増していると思うのである。