PR

 以前、「e都市ランキング」で2005年と2006年にトップだった兵庫県西宮市を紹介した(関連記事)。「e都市ランキング」とは日経パソコン誌が毎年実施している、自治体の情報化進展度を比較する企画である。そして先日、このランキングの2007年版が発表になった。今年のトップは千葉県市川市である(関連記事)。

 これは僕にも納得できる結果だ。まずは市川市のホームページを見てほしい。市川市の市章の隣には、英語、中国語、韓国語、スペイン語、インドネシア語、ドイツ語の6カ国語のリンクが並び、それぞれの言語で行政の基本情報を読むことができる。市川市の人口は46万6608人だが、そのうち8669人、およそ50人に1人が外国人だ。多様性に配慮できるのはインターネットならでは。少数者にもやさしい情報化が強い自治体を創る。

 日本語ユーザー向けの機能にもこだわりがある。ホームページの右上にある検索窓「市川サーチ」に注目してほしい。検索エンジンには日本語で検索可能なジャストシステムのConceptBaseを利用している。例えば「まちづくりへの市民参加」なんて検索窓に入力すると、基本構想、交通バリアフリー構想、都市計画マスタープランと市民参加による政策づくりの情報にアクセスできる。単語検索では得られない、いい感じの検索結果だ。

 市川市は、1カ月に300~400通、1年間では数千通にもなる市民からの意見や質問などのメールを受信している。それをテキストマイニングの技術を利用して分析し、市民ニーズの把握に努めているのだ。検索効率が高いは、その分析結果を検索エンジンに反映するからで、インターネットのコンテンツも市民のニーズに合わせて充実させている。

 検索エンジンでのアクセスが苦手な市民には、「暮らし」「遊ぶ・学ぶ」「ビジネス」「コミュニティ」「困ったとき」と情報を求める訪問者の目的別にタブが設定されている。訪問者の目的をさらに細分化した中分類へのダイレクトなリンクも張ってある。利用者のニーズを踏まえて、それにいち早く応えようとする心憎い配慮がなされている。

 もちろん、市が最も力を入れている健康都市政策のPRも忘れない。現在、どんな政策を重点的に実施しているのかが伝わることは、とても大切なことだ。また、地元企業のバナー広告を掲載するスペースも確保されている。市役所のホームページは地元企業の絶好のPR機会だ。

そのバナー広告の左隣に、市川市お得意の電子申請・届出サービスがある。市川市は、なんと今から8年も前に、コンビニエンスストアの端末を利用して行政への申請・届出サービスを24時間365日提供するという事業を開始したのだ。市川市は電子申請の老舗中の老舗なのだ。民間企業と連携して、市民の暮らしのリズムの中で行政情報を提供しようとする姿勢は好感が持てる。

 さらに、その左隣に目を向けると、おおっ! 兵庫県西宮市が開発した「道知る兵衛」があるではないか! 他の自治体が開発したシステムを共有して、低コストに住民の利便性をより高めようとする姿勢に心から賛同できる。「道知る兵衛」を開発した西宮市は「e都市ランキング」で西の横綱だ。東西の横綱がお互いに創り出したノウハウを共有するなんて、とても素晴らしいことではないか。

 市川市を東の横綱に育てあげたのは情報政策監(CIO)の井堀幹夫(いほり みきお)さんだ。井堀さんは、1972年に市川市に採用され、大型電子計算機の時代から市川市の情報政策畑一本で戦ってこられた。外部からやってきて上から叩いて情報改革を進めるCIOとはちょっと違う。井堀さんは「静」の人であり、その仕事は「いぶし銀」だ。地道な住民ニーズの分析と、それに基づき必要となったサービスの提供を丁寧に積み上げてゆく。井堀さんは下から情報改革を進めるCIOなのだ。僕が初めてお会いしたのは、もう10年近く前になるかもしれないけれど、その頃と最近の井堀さんの仕事ぶりはまったく変わっていない。

 情報政策という新しい行政分野で、しかも、限られた予算の中で、国や県との関係を保ちながら何十年も自治体のトップランナーとして走ってきた市川市の秘密は、住民ニーズの地道な分析と、常に新しい情報システムに取り組もうとする努力の積み重ねにある。だから強い。そして機能する市川市のホームページはいつも新しいのだ。すでに自治体ホームページの完成域に達しているのではないかと思うほどによく整備されている。

 僕は、市川市が築き上げてきた情報政策の上に、次世代の人たちが、井堀さんのように丁寧に成果を積み上げる努力を重ねることを期待したい。情報は生き物だ。その動きを常に冷静に見つめてこそ、住民ニーズに的確かつ動的に応える情報政策が展開できるのだ。

 市川市の皆さん、そして井堀さん、全国1606市区町村の頂点に立たれたことに、心からお祝いを申し上げます。