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 前回、学校裏サイトに対抗するには、情報収集が決め手になる、というようなお話をしました。
 確かに、情報収集は重要です。裏サイトは口コミで拡がるわけですが、その時点でサイトの存在を噂などから察知することは現実的には難しいでしょう。となると前回書いたように、学校からの書き込みアクセスなどを元に調べるしか無さそうですが、家庭や漫画喫茶などからアクセスされるようだと広く検索するといった方法しか無さそうです。今どきの検索サイトの機能ってかなり強力ですし、やり方次第ではけっこう「当たる」とは思います。しかし、これを決め手と言ってしまうのは何かイマイチというか(笑)。自分で書いておきながらちょっとピリっとしない気がするんですよね。

 自分で作れ、とか言われそうですが、優秀なWebクロウラーとかがあれば良いのになー、とは思います。所詮機械的なアクセスなのである意味イタチごっこになってしまうわけですが、それでも例えば、コンテンツフィルターのデータベースを更新するときに、非常に漠然と「エロサイト」を探すのよりは確度が高いクロールができそうな気はします。エロサイトは「エロサイト」というキーワードでは探せないわけですが、学校裏サイトの場合は「学校名」で探すことができるわけですしね。
 しかし、いくらシステマチックにクロールしたとしても、私の中でどうもモヤモヤとした感じでスッキリしないのは、それが事後対策でしかないからなのでしょう。そう、裏サイトを作って匿名でアクセスすること自体が問題なのなら、その現象をできるだけ早く捉えて素早く対策することで、被害を最小限にすることは可能です。しかし、裏サイトの問題は裏サイトを作ってどうこうというだけの問題ではなく、もっと大きな「いじめ」問題の一部であるのではないでしょうか。とすれば、根本的にはいじめ問題を何とかしないと事態が改善されないわけです。

 先日も、高校生が脅されたことを苦に自殺してしまうという痛ましい事件がありましたが、彼に対する「いじめ」アプローチの一部に、掲示板での「誹謗中傷」というものもあったようです。その掲示板が裏サイトだったかどうかはわかりませんが、裏サイトはその性格上、攻撃手段として使われることも多いでしょう。子どもたちはツールとしてのネットを十二分に使いこなしてはいるでしょうけれど、そこで繰り広げられる毒々しいやり取りはそういう「使いこなし」とは別のものです。大人でもネットで攻撃されて凹むくらいなのですから、大人ほど「鈍く」はなれないこどもたちにとってはまさしく痛撃なのだと思います。

 これが学校という狭いコミュニティの中でのことならまだしも、ネットという気が遠くなるほど広い大海原で行われる攻撃は、その「効果」を増幅してしまうのではないでしょうか。
 とすると、何とかしてこれを予防したいですね。そんな攻撃には誰も晒したくない。裏サイトを探し出す検索能力も十分に持っているし、それを停止させたり、誹謗中傷を削除させるだけのノウハウもある、ということを生徒たちに示すことは、抑止力としては重要ですが、それはいじめ問題の一側面に事後で対処できる、というだけです。もっと「いじめ」攻撃全体に効き目がある対処法は無いでしょうか。

 いじめ攻撃がインパクトを持つのって攻撃が行われるステージ、コミュニティの重要性というか、重さに依るような気がします(このあたりになると専門ではないので、言及することもおこがましいという思いもありますが、今回は思うところを書かせてください)。となると、攻撃のインパクトを減らす方法としては、そのコミュニティの重要性を減らしてしまうことが効果的であるように思えます。コミュニティを定期的に解体するとか、重層的に別な、それでいて同じくらい本人にとって重要なコミュニティを作ってしまうとかすれば良いのではないでしょうか。定期的な解体が望めるのならば、少なくともその時期まで我慢すればツライ状況を抜け出すことができるわけです。いじめ問題で良くあるようにクラス替えが救いになるというのも、まさにその「コミュニティの解体」と言えるわけですが、それをもっとアクティブに進めたらどうでしょうか。もちろん、現実的にはなかなか難しいでしょうし、いろいろハードルが存在することは想像できますが、いじめそのものがこれだけ深く沈んで見つけにくくなってしまっている現状を見ると、発見して対処することを望むよりも定期のクリーンナップで人間関係をある程度リセットしてしまう方が良いのではないかと思えるのです。

 そうは言っても、そこでいきなり学期毎にクラス替え、とかいう運営を行うのは現実的には難しいかもしれません。解体という対処法は即効性が期待できる反面、人間関係の形成という面からはデメリットもあるわけですしね。そこで、解体できないのなら他のコミュニティを作ってしまうというのも良いアプローチだと思います。アメリカの学校だったかと思いますが、先輩が後輩のいじめカウンセリングを行っているアプローチが紹介されていました。先輩と後輩がいじめのことを語ることができるコミュニティが形成されていて、そこで臆せずに自分が受けている攻撃について語り合うことができる、そういう場があるということはいろいろな意味があることだと思いますが、一つのコミュニティ(同じクラスとか学年)に閉じていない、他にも居場所があるということが、特に重要なポイントであるような気がします。
 こういった手法がどこまで現実的なのか、学校の現場を知らない門外漢が偉そうなことを言っているようで、申し訳なく思います。私自身、子どもがいるわけではありませんが、姪も甥もいて、彼らはこれから何年か学校に通わなければなりません。そこでいじめに遭ってるとか聞いたら、私自身の持っているもの全てを使ってでも彼らをサポートしたいと思っています。でも、私がいくらフォレンジックスでいじめ犯人を追い詰めようとも、それで全てを解決できるわけではないでしょう。コミュニティによる圧力をなくせないのであれば、それが解体されるまで回避する(休学など)か、離脱する(転校など)くらいしか対処法が無さそうです。しかし、解体や再構築、新たなコミュニティによる圧力減殺が望めるのなら、休学や転校などのやむを得ない方法で回避しなくても何とかなるかも知れませんね。
 何だか情報セキュリティとは離れてしまいましたけど、たまにはこういうのも良いんじゃないかと、今回は思うところを書かせていただきました。