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 先日、中国・江蘇省からやってきた視察団一行との食事会に招かれた。

 シリコンバレーには、各国からこの手の訪問者グループがひっきりなしにやってきているのだと思うが、この一行は南京を中心とする江蘇省のソフトウエア企業、政府関係者、テクノロジーパークの運営関係者など総勢40人。まずはニューヨークに行き、シリコンバレーで1日を過ごして、そのあとトロントに向かうというひどく忙しそうなスケジュールでアメリカを訪れていた。

 彼らの話によると、今や中国は、海外の製造業から製造委託を受けたり、工場を誘致したりする一次産業中心のスタイルを変えて、ソフトウエアのような頭脳型ビジネスの振興と海外への売り込みに大きく転じているのだという。海外の製造業の誘致が頭打ちになっているのは、とりもなおさず公害問題が限界にまできているかららしい。

 中国ソフトウエア産業の世界では、何千人もの従業員を抱えるインド企業にはとうてい太刀打ちできないので、数百人程度の中規模の企業が、特徴あるソフトを開発して勝負するという気運になっていると言う。インドのように多くの人が英語を話せないというデメリットも、製品開発の強みでカバーしたいと説明する。

 興味深かったのは、中国人のなんとも身軽な流動性だ。一行には5、6社のソフト開発企業が同行していたが、どの企業の責任者も米国やシリコンバレーでの就学・就職経験がある人物ばかり。かつてシリコンバレーで仕事をしたとか、米国の大学でエンジニアリングを勉強したといった人々が中国で新興企業に関わり、再度ここを訪れてビジネスをしようと思っているわけだ。

 インド人にもUターン型、つまり母国を出てシリコンバレーでビジネス経験をし、その後また母国に戻るという人々が多いというが、この中国人たちは、さらにシリコンバレーに戻ってきて足場を作ろうとするSターン型とでも言おうか。ともかく、いとも気軽な感じで、2つの大陸をすっぽりと照準に入れているようなのだ。

 彼らがさらに強いのは、米国内に中国系アメリカ人のインフラがあること。この食事会にも地元の中国系市議会議員らが同席していて「中国系アメリカ人として、みなさんがやってくるのは大変うれしい」などと言いながら、握手をして回っている。米国と母国の間をこれだけ即席に結べるのは、中国人と中国系アメリカ人以外にはいないだろう。

 以前「百人会」という、有力な中国系アメリカ人会議の会合に参加したことがあった。これは米国の上院議員や政府関係者らも顔を出してネットワークを築こうとするほどの影響力のある会議である。長年この国で生活をし、功を成し遂げた人々が、さらに中国系アメリカ人をもり立てようとする集まりだ。この会議は今やロビーイングのパワーにもなっているようだ。

 米国はもちろんのこと、シリコンバレーにも日本人は多いが、やはり大方は企業の派遣組。個人が体を張って築き上げてきたようなここまでのインフラは、なかなかできない。

 「個」で動き、ネットワークを作っていく、中国人、そして中国系アメリカ人のこの力はなかなかすごいと思った。