PCをはじめとする現代のコンピューターのほとんどは、「同期式コンピューター」に分類される。これらのコンピューターのデジタル回路の大半は「同期回路」で構成されている。同期回路は「クロック」と呼ばれる特別な信号でタイミングを取りながら動作することが特徴だ。クロック信号をシステムや半導体内部で分配する方法はいくつかあり、コンピューター内部の回路の高速化に伴って変化してきている(図1)。

クロック回路の方式で最も多く、かつ古くから使われている手法が「コモンクロック方式」だ。コモンクロック方式では、共通のクロックソース(例えばクロックジェネレーターと呼ばれる部品)から、データの送信側(ドライバー)と受信側(レシーバー)の回路が同じタイミング情報を受けて動作する。PCの中では、PCIデバイスなど、比較的動作周波数が低い回路にこのコモンクロック方式が使われている。
最近の動作周波数が高い回路では、信号が「0」から「1」に変わる時間(遷移時間)は100ピコ秒(ピコは1兆分の1)以下と非常に短くなってきた。PCで使われているプリント基板上で信号が進む速度は光の速さの約半分で、100ピコ秒ではわずか17mm程度しか進まない。基板上の配線が長い場合、送信側デバイスから送られた信号が受信側デバイスに到達するまでに要するわずかな時間内に、高速な回路では信号の状態が変化してしまうことになる。