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 CPUの性能向上は、シングルコアで動作周波数を上げるというアプローチから、マルチコア化へと大きく転換した。そのマルチコア技術と共に、注目され始めたのが特定用途向けの「コプロセッサー」による処理の高速化(アクセラレーション)技術だ。今回は、AMDが2006年6月に発表した「Torrenza(トレンザ)」について解説する。

処理の多様化に備える施策、特定用途の演算チップを実装

 コプロセッサーによる性能向上という手法は、実は新しい考え方ではない。例えば浮動小数点演算ユニット(FPU)も、Intel製CPUなら80386世代まではコプロセッサーとしてCPUとは独立してシステムに実装されており、その後CPUに内蔵するようになったという経緯がある。

 CPUを中心としたシステム全体の性能向上は、CPUのアーキテクチャー改良(8ビットから64ビットへ)や動作周波数の引き上げ、マルチコア化によって推し進められてきた。一方で、処理の内容は多様化しており、大規模な科学技術演算など一部でのみ使われていたデータ解析手法が企業内の一般的な業務にも適用されるなどの例もある。このような計算処理には、ただ汎用コアを複数実装するだけでは対応が難しい。AMDのTorrenzaは、そうしたニーズの変化に対応するためのものだ。

 Torrenzaは、主にサーバーやエンタープライズ(大規模業務用途)の市場に焦点を当てた施策の1つだが、AMDはグラフィックスチップ(GPU)とCPUを融合するコンセプト「Fusion(フュージョン)」も発表しており、混同されることがある。それぞれの定義の違いをまとめたのが図1だ。Torrenzaは、PCIやPCI Express、HyperTransportなどの汎用バスを通じて、拡張ボードやCPU(Opteron)用のソケットに実装したコプロセッサーへアクセスする。Fusionは、CPUパッケージに実装したグラフィックスチップを中心とする特定用途コアへアクセスする。

 Torrenzaはいわば「外付け型」なので、コプロセッサーが不要なユーザーには、追加コストが発生しない。もちろん一体型とは異なり、使わない機能で無駄に電力を消費することもない。