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 AMD製CPUが性能や電力面で優位性を保っているのは、そのアーキテクチャーや省電力機能の「Cool’n’Quiet」「PowerNow!」のほかに、製造プロセスにSOI(Silicon On Insulator)技術を採用している点にある。今回は、SOIの概要を解説する。

 従来型のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)半導体集積回路は、シリコン基板の表面に直接形成されているので、CMOS回路とシリコン基板の間にリーク(漏れ)電流や「寄生キャパシター」が存在している。この「寄生」とは、本来は不要なのに構造上キャパシターとして機能してしまう状態になる、という意味だ。寄生キャパシターは不要な電荷の蓄積のことを指している。そこで、CMOS回路とシリコン基板の間に、電気的絶縁性を有するシリコン酸化物の層を挟めば、リーク電流や寄生キャパシターを抑えられる。これがSOI構造の基本的な考え方である。

 SOI構造を形成する代表的な技術として以下のものがある。サファイア基板上にシリコン単結晶薄膜を成長させる技術。シリコンウエハー上から、イオン注入技術によって酸素を打ち込み、シリコン単結晶薄膜の下にシリコン酸化物の層を形成する「サイモックス(SIMOX、Separation by Implantation of Oxigen)」と呼ばれる技術。表面にシリコン酸化膜を有するシリコンウエハーとほかのウエハーとを貼り合わせ、裏側から研磨してシリコン酸化膜上にシリコン単結晶薄膜を残す「シリコン貼り合わせ技術」の3つだ。AMDは、シリコン貼り合わせ技術によるシリコンウエハーを用いている。

SOI採用で消費電力を改善、同じ電力なら性能も3割向上

 図1は、CMOS半導体集積回路の従来の構造とSOI構造との比較だ。従来の構造は、P型シリコン基板に「Nウェル」を形成することにより、同一基板上にNチャンネルトランジスターとPチャンネルトランジスターを構成する(図1の左側)。