PR

 ノートPCはデザイン上の理由から、むやみに厚くするわけにはいかない。そのため、ノートPC用CPU(AMDの場合はSocket S1用のTurion 64 X2/Turion 64/Mobile Sempron。以下Socket S1用CPU)には「リッド」と呼ぶダイを保護するカバーがない。仕様上の上限温度も、ケース温度(リッド表面の温度)ではなくダイの温度(正確にはダイに埋め込んだサーマルダイオードの値)で規定している。

CPUの仕様を満たす熱抵抗の機構を選ぶ

 現行のAMD製ノートPC用CPUでは最高動作温度が95℃。リッドを経由した値でない分、デスクトップPC用CPUより高くなっている。ノートPCの熱設計では、底面やパームレストの温度など考慮すべき点は多いが、今回はCPUの放熱について解説する。

 熱設計を理解するには「熱抵抗」という概念が必要になる。温度差/電力[℃/W]で定義する値で、ある抵抗(物質)に1Wの電力を加えたときに、抵抗の両端に何℃の温度差が生じるかを示す。CPUが消費する電力のうち、熱設計上の最大値をTDP(Thermal Design Power)と呼ぶ。例えばTDPが35WのCPUのダイから周囲温度まで、熱抵抗1.40[℃/W]の放熱部品を使用した場合、ダイの温度はCPUの周辺温度より1.40×35=49℃だけ高くなる(図2)。