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 それにしても、なぜこうもIT用語は「ややこしい」のだろう。

 今、手元に某IT系大企業の会社案内があるが、ぱっと見ただけでも「すごいこと」になっている。3文字略語のオンパレードなのである。B2B,B2C,CRM,SCM,ERP,EAI,EDI,iDC,ASP,OSS,EUC,SFA,eMP,MRO……。2文字略語に至ってはIT,OS,DB,IP,NW,EC,KMなどなど、他業界の人が見たら全く違う同音異義語を思い浮かべるに違いない。

 しかし、偉そうなこともいってはいられない。典型的な文系人間だった私でさえ、いつしか本コラムでは平気で「Eメールマーケティング」「アフィリエイト」「CSO」などの難解語を使うようになってしまった。数年前までは、経営情報学会などでこうした難解IT方言に振り回されていたにもかかわらず。

 なぜ、ことITに関しては、難解なまま用語を直輸入してしまうのだろうか?「ECONOMY=経済」に代表されるように、外来語をやさしい日本語に意訳するのが得意な日本人の美徳を、なぜ無視してしまうのだろうか?いくつかその原因を考えてみた。

1.直訳・意訳できないと思考停止

 まず、その概念自体が日本語にないため、直訳・意訳が難しい場合に、そのまま使ってしまうのではないか?例えば、どんなソフトでも使われている「プロパティ」や、インターネット接続の「アカウント」といった言葉は、英和辞典にある意味そのままでは訳すのが難しい。私が日本語開発担当だったら、意訳を断念してしまうかもしれない。

2.日本語化をするプロの不在

 ソフト開発会社などIT業界に、出版業界の編集長やデスクに当たる「日本語のプロ」がいないことが悲劇の始まりではないか。直訳すると「もう一度、お客様の目線で考え直せ」と怒鳴るような上司が、IT業界にも必要だろう。

3.英語堪能な開発者の弊害

 いち早く新しいITの概念に触れ、ソフト開発に携わる研究開発者の多くが英語に堪能で、英語の論文やソフトで苦労していないことも、一般の日本人ビギナーにとって悲劇だ。本音では「訳さないでいい。訳すとかえって面倒だ」と思っていないとは言い切れない。

4.一言って十通じるので便利

 例えば「1TO1マーケティング」のように、本が一冊書けそうな概念を一言で表せる専門用語は、研究開発者やコンサルタントにとって便利だろう。ただし、十通じるためには、聞く側にも話す側と同程度あるいはそれ以上の知識や見識が必要だが。

5.頭が良くなった気がする

 厄介なのは、こうした難解IT方言を使うと、十通じる知識がないにもかかわらず、賢く見える、あるいは賢くなった気がするところである。私など、まさに、このケースに当たるかもしれない。

6.古いことでも新しく見える

 ありがたいIT活用法といわれていても、本当に新しい理念や概念とは限らない。例えば日本では、「富山の薬売り」や「大福帳」などで、IT以前のはるか昔から実践されていることも多い。しかし、難解3文字略語が冠に付くと、昔ながらのシステムもやけに立派に見えることがあるので注意したい。

7.顧客を幻惑する魔法

 つまり、実は古くて陳腐化していることであっても、大した能力がないコンサルタントや技術者でも、取りあえず魔法の3文字を使っていると立派に見えて、時にお客様を幻惑することもできるのだ。わざと難しくすることで用語集や解説本が売れているのかもしれない。

ぜひ撲滅キャンペーンを

 そこで提案したいのだが、新しいIT用語が出現したら、利用者による投稿で、簡単な言葉に置き換えてはどうだろうか。例えば、本誌の誌面とホームページで「難解IT方言撲滅キャンペーン」を常時行い、毎週一つずつ難解な言葉を置き換えていく。命名後は、それが広く使われるよう研究開発者にも呼びかける。そして、命名者リストをWebに永久保存して名誉をたたえよう。