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 国内外を問わず、転居には労力を伴うものです。引っ越し先では、ガス・電気や水道のほか、コミュニケーションの確立も重要なことです。特に遠く離れた海外への引っ越しとなると、日本にいる家族や友人のことがことさら気になるので、コミュニケーションの確立はとても重要です。

 日本での引っ越しではそれほど不便に感じなかった固定電話線の設置やインターネットプロバイダーとの契約。これが海外になるとかなりの手間になることもあります。昨年、私がロンドンで味わった「苦しみ」を、今回はご紹介しましょう。

 インターネットなどのコミュニケーション環境を整えるためにまず必要なのは固定電話の回線を引くことです。英国には電話会社が多数ありますが、ブリティッシュ・テレコム(BT)というNTTのような元々お役所だった会社が主力です。このほか、日本と同様、ケーブルテレビ会社なども電話回線やインターネットをパッケージにしたサービスを提供しています。

 私はそれほどテレビを見ないので、電話回線とインターネットを別に申し込むことにしました。英国では、日本と同じように、さまざまなサービスをインターネットで申し込めるようになっています。ただ、BTの回線は、電話でなければ申し込みできませんでした。

 ここから、苦難の道が始まりました。BTは民営化されたとはいえ、どうやら顧客に対するサービスの感覚が欠けているようです。申し込むために電話をかけても、つながるまで数十分、それから新規回線を扱う部署にたどり着くまでまた数十分もかかりました。日本でもカスタマーサービスにつながるまで長くかかることがありますが、これほど時間がかかることはないように思えます。

 電話で氏名や住所を伝えるだけでは、回線を開設できません。開設のためにエンジニア立会いのもと住居の回線状況を確認する必要があります。このためには、工事費用と保証金がかかりました。

 ここで、さらなるハードルにぶつかります。費用を支払う方法が、日本とはまったく異なったからです。現金もあるしクレジットカードも持っていましたが、それでは支払いを受け付けてもらうことができなかったのです。英国では本人確認と支払能力があるかを確認するために、銀行口座からの直接決済が一般的です。これはこれまでの実績に基づく「信用」に深くかかわるようです。

 例え口座があったとしても、これだけではまだ支払いができません。「デビッドカード」という、日本での知名度はまだそれほどではないクレジットカードのような機能を持つキャッシングカードを持っていなければなりません(出典:経済企画庁物価局)。このカードにはICチップが埋め込まれていて、本人確認のための暗証番号が必要です。

 このあとも、トラブルは続きます。エンジニアの立会い日まで3週間待つことになりましたが、結局、エンジニアは工事当日に現れませんでした。関連する部署の連絡が不十分だったようです。なんとか交渉して予定日より3日遅れで電話回線を開通することができましたが、こういったトラブルは英国では日常茶飯事とのこと。何事にも忍耐が必要なようです。

 電話回線の次はインターネットのセットアップです。BTからのインターネット開設はかなり割高になると聞いていたので、インターネット専業業者を選ぶことにしました。割安かつ最速で開設できるところを探してみると、ティスカリというプロバイダーが見つかりました。ADSL回線で、回線速度は2Mbps。日本では「遅いスピード」に入るでしょう。英国では最近になって8Mbpsのサービスも増えてきていますが、2Mbpsクラスが主流です。日本のように光ファイバーなどによる高速通信を利用できるのは、企業などの大口だけに限られているようです。

 ロンドンへ引っ越してから約2カ月もかけて、やっと自宅から外部へのコミュニケーションが満足にできるようになりました。英国は、長い行列でも文句を言う人が少ない、「辛抱強い」ことで知られた国ですが、これまで暮らしてきた日本や米国と比べて、普通の生活を営むために「忍耐」と「信用」が必要なようです。

 今ではコミュニケーション手段も確立され、インターネットもワイヤレスのブロードバンド、インターネット経由のテレビ番組を観ることもできるようになり、快適なIT環境を楽しんでいます。