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 前回お話ししたメーリングリストは部署用だけでなく、部署を超えたプロジェクトチーム(いわゆるクロスファンクショナルチーム、以下CFT)でも大いに活躍します。いや、働いている物理的な場所が離れているからこそ、メーリングリストを活用すべきだとも言えます。

 今、取り組んでいる松竹芸能のプロジェクトでは、大阪にある本社と、東京支社との間での、コミュニケーションの取りにくさが大きな課題となっています。松竹芸能に限らず、支社と本社の間の情報ギャップは必ず発生しますが、そのギャップを解消するための方策が、あまり取られていない現状がありました。そこでまず導入したのが、全社員へメールを送るための全社員メーリングリスト。さらに、部署ごとにメーリングリストを設定し、その後、運用を開始したのがCFTメーリングリストでした。

 例えば、4月下旬に実施される丸の内でのイベント「朝EXPO」へ、松竹芸能が企画協力しているのですが、そこにかかわっている人は、大阪3名、東京4名の、あわせて7名。この7名を結んでいるのが、朝EXPO用のメーリングリスト。日々のやりとりがメーリングリストを通じて知らされる。メールは、各自の携帯電話にも転送されるようにしているので、ほぼリアルタイムに状況が共有されていきます。

 ほかにも、新しいロゴを開発するコーポレートアイデンティティ(CI)プロジェクト、新ウェブサイトプロジェクト、各タレントの展開を考えるタレントプロジェクト、タレントスクールプロジェクトなど、いずれも東京大阪の枠を超えたCFTによるプロジェクトが、メーリングリストによって進められています。

 企業内やグループ内での情報共有というと、社内ブログや社内掲示板、社内SNSという手もあるかもしれません。ただ、これだと誰かがブログなどの管理者になったり、サイトに見に行くという能動的な行為が発生したりしてしまいます。誰かが管理者になる必要がなく、かつ、日に何度もチェックするメールだからこそメーリングリストを使った情報共有は便利なのです。

 こうしたメーリングリスト運営の裏にあるのは、「本当の意味」でのミドルマネジメントへの権限委譲です。情報の流れを誰もが見えるような形にすることで、トップマネジメントが状況をいつでも把握できるようになる(それぞれのメーリングリストのメールは社長、副社長にも行きます。毎日届くメールの量はものすごい量)。ミドルマネジメントは、「トップにも把握してもらっている」という安心感から、思い切って行動を進めることができる。情報の見通しをよくするだけで、ミドルマネジメントの活動が活性化されるのです。

 「本当の意味」と付けたのは、これまでの権限委譲が、多くの企業で本来的には実行されてきていないのではないかという僕自身の懸念があるからです。権限委譲ということで、現場で企画を立案させるのはいいのだけど、それを提案した結果、トップマネジメントから納得のいかない理由で却下される。ミドルマネジメントは「権限委譲するからどんどん動けといわれても、いったいなんの権限が委譲されているのか分からない……」という、ダブルバインド(二重拘束)の状態に陥り、トップはトップで「現場に勝手にやられると何をされるか分からない。却下するのもトップの仕事だ」と思っている。確かにトップの役割として現場の暴走をチェックすることもあるけれど、しかしそれは現場を知った上で、という留保が付くことを忘れてはいけない。メーリングリストという方法は、そうしたトップとミドルの両マネジメントのうまい橋渡しになるわけです。