スマートフォンやタブレット端末、モバイルノートの普及により、外出先でもインターネットに接続してメールやWebサイトを閲覧することがすっかり普通になった。モバイル機器を忘れたらその日1日仕事にならない、という人も多いだろう。
モバイル環境、3つの進化
そのモバイル環境が、ここ数年で大きな進化を遂げつつある。ここでいう進化は、(1)機器、(2)通信速度、(3)エリア──という3つの要素がある。まずは、接続に使う機器だ(図1)。ほんの3年ほど前まで、モバイル環境でインターネットに接続するといえば、パソコンやPDA(携帯情報端末)にUSBスティック型やカード型のデータ通信モジュールを挿すのが一般的であった。携帯電話は、いわゆる携帯メールや「iモード」など独自のコンテンツの閲覧には適していたが、それを除けば携帯電話からのインターネット接続は現実的でなかった。
2009年頃になると、こうした状況が変わり始めた。「モバイルルーター」の登場である。モバイルルーターとは、3G回線経由で外出先でもインターネットにつながる、いわば携帯型の無線LANの親機だ。パソコンやiPod touch、携帯型ゲーム機などの無線LAN対応機器が、外出先でも簡単にインターネットに接続可能になった。同じ時期、iPhoneやAndroid端末などスマートフォンも国内で普及し始めたが、モバイルルーターを中心とするネット接続環境とは独立したものだった。
このように独立した存在だったモバイルルーターとスマートフォンが、2011年頃から融合し始める。スマートフォンがモバイルルーターと同様の機能を提供する「テザリング」が広がり始めたのだ。これまでモバイルルーターとスマートフォンの2回線分必要だった契約が1回線にまとめられ、名実ともにスマートフォンがモバイル通信の中心になった。
こうした端末の進化の勢いは、対応機種の増え具合を見ると一目瞭然だ(図2)。国内では、2009年に従来型携帯電話でテザリング機能を備えた機種が初めて発売された。しかし当時は、テザリング料金が高かったこともあり、普及が進まなかった。その後、スマートフォンの普及でテザリング機能の搭載が容易になったほか、料金も安価になり、最近は対応機種も飛躍的に増えている。
速度もエリアも充実
2つめの進化は通信速度だ。LTEやモバイルWiMAXといった第3.9世代(3.9G)の移動体通信サービスが、慢性的に混雑して速度も低下していた3Gに代わり普及し始めている。さらに2012年には、下り最大100Mbpsクラスと光回線に匹敵する高速サービスも相次いで始まる(図3)。「出先のネット接続だから遅くても仕方ない」という今までの常識が変わろうとしている。
3つめの進化は、エリアの広がりだ(図4)。例えば、これまで“圏外”が当たり前だった走行中の地下鉄。トンネル内にアンテナを設置し、走行中も途切れなく通信可能にする動きが、各地の地下鉄で広がっている。公衆無線LANも、携帯電話事業者各社が10万~20万局という大規模な整備を進めているほか、セブン-イレブンやローソンの国内全店舗で無料の公衆無線LANサービスの整備が始まるといった動きもある。
次章以降、これら3つの進化を具体的に見つつ、最新のモバイル環境の整え方を考えていこう。