スマートフォンが普及したことで、いつでもどこでもWebページで情報を入手し、Webサービスが利用できるようになった。その一方で、通信量の多いスマートフォンのユーザーが急激に増えたため、都市部などでは通信の混雑が大きな問題になっている。
そこで通信事業者は増え続ける通信量に対処し、ユーザーが快適に利用できるようにするため、高速化した新しい通信方式「LTE(long term evolution)」のサービスを開始している(図1)。先行したNTTドコモは、複数のLTE対応スマートフォンを取りそろえている。イー・アクセスやソフトバンクモバイルは、パソコンなどの通信に使えるモバイルルーターを投入している。KDDIは2012年内の開始を予定する。
無線LANと基本は同じ
LTEの通信速度は理論上で最大326Mbps。現在のNTTドコモなどのサービスでは、約75Mbpsの速度を上限値としている。従来の携帯電話向けのデータ通信方式である「HSPA」方式は最大14.4Mbps。拡張版の「DC-HSDPA」方式では最大42Mbpsとなる。LTEは、これら従来の方式と比べて、大幅な高速化を実現する。
高速化を実現した技術的なポイントを見ると、無線LANと実によく似ていることが分かる。従来のHSPA方式では、「CDMA(code division multiple access)」と呼ばれる通信技術を使っていた。これは無線LANのIEEE 802.11bが利用する「スペクトラム拡散」という仕組みを使う。LTEでは、この通信技術をOFDM に切り替えた。これは、無線LAN の11a/g/n で使っている通信技術と同じ仕組みである。周波数の幅を拡大し、MIMO で多重送信するという点も、2章で紹介した無線LANと同じだ(図2)。
LTEには「FDD(frequency division duplex)」方式と、「TDD(time division duplex)」方式の2種類がある(図3)。欧米での主流はFDD方式で、TDD方式は中国を中心としたアジア地域で広がっている。
日本では、ベンチャー投資などで中国との関係が深いソフトバンクが「SoftBank 4G」でTDD方式のLTEを使っている。一方で同社はFDD方式のLTEサービスも2012年秋に開始すると発表した。間もなく登場するといわれる次世代iPhoneのLTE方式に合わせたのではという観測もある。