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 日本ではずいぶん前に規制されたようだが、カリフォルニア州では、この7月1日からようやく運転中に片手を離して携帯電話を用いるのを禁止する条例が施行された。これはアーノルド・シュワルツネガー知事が2006年に承認した法律で、2年の準備期間を経ての実施となった。

 さすがにこれにはホッとした。というのも、携帯電話で通話中のドライバーに迷惑をかけられたり、彼らの危なっかしい運転を目撃したことが一度や二度で済まないからだ。高速道路で背後も確かめずに車線を変更するドライバー、急にスピードを落としてノロノロ運転するドライバー、あるいは交差点の赤信号を無視して突っ走るドライバー。会話に夢中で気もそぞろなこうした人々が、本当にたくさんいるのだ。

 この条例によって年間300人の命が助かるという見方がある一方で、それほど効き目がないのでは、という批判もある。なぜなら、18歳以下には運転中の携帯電話の使用自体を禁止しているが、成人はイヤホンを装着した通話や、Bluetooth内蔵の自動車内で通話することは許されているからだ。携帯の会話に気を取られることには変わりないのだ。

 実際、カーネギー・メロン大学が脳の働きをMRIで追って調べたところ、携帯電話で相手の話を聞いているだけで、運転への注意力は3分の1低下しているのだという。脳を会話に使っていると、空間感覚やナビゲーション感覚、視覚情報を捉える感覚が低くなるらしい。

 条例の効き目を疑問視させるもうひとつの要因は、罰金の低さだ。1回目の違反は20ドル、2回目は50ドル。その後はもっと高くなるようだが、違反のポイントもつかないため、保険料にも響かない。シリコンバレー人なら、このくらいの罰金には目をつぶってビジネスを優先させようと思う人がいてもおかしくない。

 そんな中、同条例のおかげで儲けているのは電器店。施行の1カ月ほど前から、20から30ドルの価格帯の商品を中心にイヤホンが好調に売れ続けているらしい。Bluetooth搭載のイヤホンは、2007年には前年度比で15%ほども売り上げを伸ばしているという。太い輪ゴムで携帯電話を頭に貼付けようと提案するアイデア・ギャグサイトもある。

 アメリカ人にとって自動車を運転することは、家の扉を開けるのと同じくらいひどく日常的な行為である。だから、運転はとても気楽にこなすのだが、気楽が過ぎて、運転中に日本では想像もつかないようなことをやっているドライバーを高速で見かけることも多い。

 フルコースのメークアップはごく当たり前。洋服を着替えている人、膝の上がまるでテーブルセットのごとく、しっかりと朝食を食べている人。書類はもちろんのこと、ステアリングホイールの上に新聞を広げている人を見たこともある。すべて、渋滞中の話ではないから、けっこう怖い。

 最近は、大きな犬がドライバーとフロントガラスの間に立ちはだかっているといった風景もよく見かける。こういうのも違反にしなくていいのかと心配になるのだが、今のところその気配はなさそうだ。

 アメリカの路上は、依然として怖い場所である。