PR

 グーグルコリアが去る9月、韓国のブログ専門ベンチャーTatter&Companyのサービスを買収し、韓国内でのサービスを強化する方針を明らかにした。グーグルコリアが韓国企業を買収したのは初めてのこと。Tatter&Companyはオープンソースのサーバー設置型ブログ「Tattetools」を開発元で、韓国のブロガーの間ではとても有名な会社である。

 ポータルサイトDAUMのブログもここの会社の事業部門を買収して運営されている。今回も会社そのものの買収ではなく、サービス部門の買収ということである。しかしグーグルコリアはブログサービスを提供するための買収ではなく、R&Dと検索サービスを強化するための買収であるとしている。

 韓国ではポータルサイトが検索、無料メール、コミュニティ、ブログなど全てのサービスを連動させる戦略でシェアを独り占めしている。韓国最大のポータルサイト「NAVER」は検索もブログも圧倒的な差で利用者1位をキープしている。韓国語で作成されているWebページの数は英語に比べて絶対的に少ないため、ブログに書き込まれた内容も貴重な検索データベースになり、コミュニティーとも連動しているので、検索結果が豊富でユーザーが集まる。ユーザーが集まるところにまたユーザーが集まるので、ページビューの独占は加速するばかりだ。もちろんNAVERやDAUMは使い方も工夫していて、検索結果をカテゴリーに分けて細かく表示するなど使い方もとても便利だ。そのため2004年あたり繁盛していたソーシャルネットワークサイトやコミュニティ機能を専門とするサイトはNAVERにユーザーを奪われている。

 グーグルは2005年9月にグーグルコリアを設立し、韓国でサービスを開始したものの、Googleの検索シェアは未だに2%前後に過ぎず、力を発揮できていない状況である。そのためグーグルコリアが韓国のブログサービスを買収するというニュースは、韓国市場に本腰を入れるのかということで話題になっている。グーグルコリアは「Tatter&Company」のブログ機能よりも、韓国のネット市場に詳しい人材をセットで買収できたことに満足しているようだ。検索以外のサービスでユーザーを惹きつけ、検索へと誘引する戦略なのだろうか。

 グーグルコリアは韓国でのシェアを高めるため、親韓国作戦を繰り広げている。2007年には韓国にR&Dセンターをオープンして1億4000万ドルを投資すると発表し、2008年9月には1000万ドルを追加投資すると発表した(この件は以前、「グーグルコリアの人材確保策、厚遇の裏にある狙い」で取り上げた)。「グーグルが韓国に投資してくれるなんて」という好意的な反応を予想していたはずだが、残念ながら反応はいまいちだ。インテルの二の舞になるのではないかと疑っているからだ。

 インテルは2004年3月、韓国政府とホームネットワークの共同研究をするとしてソウルの郊外にR&Dセンターをオープンした。韓国をアジアの拠点にすると大々的に宣伝しておきながら、2007年1月には本社の経営状態を理由に撤退、上海にR&Dセンターをオープンしたのだ。グーグルも口先では韓国ベンチャーを買収してサービスを強化する、もっと韓国に投資する、韓国と共同研究する、といっているが、韓国の立場からするとインテルのようにいつ裏切って中国へ行ってしまうかわからないというのが正直な心情だ。

 グーグルコリアは「Tatter&Companyの買収は検索研究のためであってコンテンツを増やすのが目的ではない。韓国でブログサービスを新しく提供するかどうかもまだ分からないが、グーグルコリアは韓国のネットユーザーと広告主が望むものは何かを正確に把握し、そのために組織を成長させている。韓国に対する持続的な投資を惜しまない予定だ」としている。韓国人向けの検索を提供し、シェアを確保するためには韓国人の検索パターンをよく知るエンジニアが必要だ。今回の買収は人材確保が何よりも目的だったというわけか。

 グーグルがブログを始めればネット亡命できると喜んでいたユーザー達はがっくりである。この頃、悪質なコメントに傷ついて芸能人が自殺する事件がまた何件も続いているため、ネット上の本人確認や書き込みの内容に対する取調べが強化されているからだ。ろうそく集会(2008年4月に韓国政府が米国産牛肉の輸入制限解除に踏み切ったことに抗議し、市民がろうそくを手に徹夜でデモ行進を行った)の時だって、ネットの書き込みを追跡して何人もの人が指名手配されている。書き込みのどこが問題なのか、見る人によって判断が違っていたため、ブログの表現の自由を求め海外サイトへ逃げるネット亡命が続いていた。その動きを受けて、グーグルがついに韓国でブログサービス開始か!と思っていたらそうではない様子。R&D強化が目的というのも韓国の発展につながるので嬉しいことは嬉しいが、インテルのようにはなってほしくないものだ。