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 サンフランシスコ市内に住む友人が、最近引っ越すことになり、住まいを貸し出すことにしたという。彼らの住まいは、ゴールデンゲート・ブリッジも臨める丘の上。デザインもモダニズム風でおしゃれ。なかなかにいい地域にある。

 この金融不況の中で借り手を探すのにかなり苦労するだろうと思っていたところ、実際はその反対。広告を出してから契約を結ぶまで、何と11日というスピーディーなプロセスだったという。

 彼らが驚いていたのは、すぐさま連絡を取ってきた二組はいずれもニューヨークの金融関係の会社で仕事をしていて、サンフランシスコに転居してきたばかりだったという点。家賃は6500ドル(約66万円)となかなかに高いのだが、いずれのカップルもそんなことを気にするそぶりも見せず、一組のカップルは絨毯敷きの床を木貼りのハードウッド・フロアーに変えるならば、そのコストの半分を持ってもいいなどと趣味のこだわりまで見せたという。

 11日で決まったというのは、住宅バブル期に飛ぶように売れて行った住宅販売には及ばないものの、この不況下のグレーな空気の中ではけっこう意外なものだ。しかも、地元の人間ではなく、ニューヨークから金融業界関係者が流れ込んでいるというのも面白い。彼らにとっては、ニューヨークでは仕事はなくなったけれど、カリフォルニアにはまだまだ職があって、ここでなら何100万円もの月収があるのだから、66万円など大したことはない、というところなのだ。別の友人からも、ニューヨークの人々がここへたくさん引っ越して来ているといううわさを聞いた。

 話は変わるが、先週の日曜日のこと。親しい知人の誕生日パーティーで、やはり市内のレストランへ行った。有名店でお値段も安くない店。普通ならあまり客のいない日曜、しかもこの不景気模様だ。さぞかし人もまばらだろうと思っていたら、それが大変な混みようである。

 上品に着飾った中年の男女がほとんどで、賑やかな若いグループ、家族連れもいる。そうした人々がテーブルというテーブルを埋めているのである。

 こういう場面を見ていると、新聞やテレビで連日騒がれていることと、実際に目にすることの落差を実感せずにはいられない。もちろんローンが払えなくなって自分の家を追い出されたり、職を追われたりしている人々が無数にいるのは事実だ。一方で、職がなくなったり株価が下がったりしてもまったく懐に響かない人々もいるのである。

 カリフォルニアやニューヨークなどの都市部は、特にそうした経済的免疫の強い人々(つまり大金持ち)が多いところで、シリコンバレーももちろん例外ではない。日本ではあまり知られていないが、アメリカでもアパラチア山脈のような地域では白人の極貧住民がほとんどだし、デトロイトのような自動車産業という単一業界にたよってきたところは、都市全体が不況に苦しんでいる。

 国土も狭く、まだまだ国民がだいたい同じような経済感覚を共有する日本と比べると、アメリカの地域差や所得クラスの間の大きな差は、把握するのが本当にむずかしい。これは、アメリカの強さであり弱さでもある。